実際に、筆者もNovelAIの画像生成サービスを利用してみた。筆者はイラスト制作について何のスキルもないが、NovelAIではたった1行の英文を入力すれば本格的なイラストをAIが代わりに制作してくれるようだ。試しに「竜に乗っている湖畔の巫女(みこ)」のイラストを作成してみたいと思い、Google翻訳で「A lakeside shrine maiden riding a dragon.」と機械翻訳した上で、NovelAIに英文を読み込ませた。すると、ものの数秒でスマートフォンゲームやライトノベルの挿絵で出現してもおかしくないレベルの高品質なイラストが生成された。
画像の生成には、「Anlas」という有料のポイントが必要であるが、今回生成に要した「5 Anlas」は日本円にしてたったの7.5円(1 Anlas=約1.5円)である。通常、イラストレーターにキャラデザインや背景などの要素も必要な高品質イラストを依頼する場合には、最低でも1枚当たり3万〜5万円は必要で、納期も2カ月程度を要するケースもある。そのような規模感のイラストが一瞬で、かつ7.5円という超低価格で生成できる本サービスは「価格」そして「スピード」の面で、これまでのイラスト制作をある種破壊したといって差し支えないだろう。
しかし、このような技術革新は今、SNS上で大きな物議を醸している。というのもこのレベルのAIコンテンツ生成サービスが世の中で一般的になれば、従来の主流なAIの用途であった「AIがコンテンツの生産者を補助する」という役割を飛び越えてしまうからだ。つまり、AIが「消費者」を「作り手」に変えてしまい、時には専門的技能を体得した本来の生産者よりも優れた作品を生み出してしまうことにつながりかねない。
国際連合(国連)では、AIが人間の職業を奪う「AI失業」が懸念されている。しかし、従来その範囲はレジ担当者や金融機関の窓口業務のような事務作業や工場のオペレーターのような製造業で発生すると考えられており、イラストレーターのような創造性が求められる仕事についてはむしろ「安泰」とさえいわれていた。しかし、NovelAIをはじめとしたイラスト生成サービスが先鋭化してくれば、そのようなクリエイティブな職種についても決して安泰とはいえないのかもしれない。
最近では、イラストレーターが生配信で絵を完成させるという「ライブドローイング」をファンに向けて公開していたところ、完成途上のイラストを第三者がスクリーンショットし、AIイラストレーターサービスに読み込ませ、本来の制作者よりも先にイラストを完成させるといった事件が発生した。
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