次に、AIは同一キャラクターにおける複数のイラストを制作することも苦手だ。AIに同じキャラクターをオリジナルで描かせようとしても、全く同じ衣装を出力することが難しかったり、色や書き方といった手癖自体にもバリエーションが出てきたりしてしまう。通常、手癖というものはイラストレーターが自信の長期にわたるキャリアで醸成されたものであるため、その人固有の描き方がある。一方で、AIには手癖が毎回変わるか、そもそも手癖の全くない、のっぺりとしたイラストとなるかに大別される。そのため、イラストの制作請負案件で、「1枚絵・1種類以外は作れない」といった記載があるものは、複数作品が比較されることでAIとバレないようにしている可能性がある。
このように、AIのイラストはよく見ればまだ人間の作るイラストと互換性があるとはいえない。「AIイラストの隆盛と、それに伴うイラストレーターのAI失業」は黎明期である今こそ脅威として認識されているだろうが、利用者側で鑑定眼が醸成されてくれば、そのようなイラストには見向きされなくなってくるため、脅威とはならないだろう。
むしろ、そのようなAIが市場にあふれてくれば、今はありふれているイラストレーター本人の「人間性」が付加価値として再評価されてくることにもつながってくるのではないだろうか。
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CFOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
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