上記のように、本人よりも早く同じイラストを完成させるといった半ば嫌がらせのようなレベルであればまだしも、人間が仕事を請け負ってAIにイラストを制作させるような事例を見破ることは今後、難しくなってくると考えられる。
確かに、NovelAIの運営側は著作権を主張しないとしているため、商用利用も可能とされている。しかし、イラストの制作は成果物だけでなく、「クリエイター自身がイラストを描いてくれる」という点についてもお金を支払っているはずだ。仮にそれが誰でも使えるサービスを使い、出力されたものを横流ししているだけと知っていれば、お金を払って依頼することはないケースも多いだろう。そういった意味で、イラスト制作の仕事を請け負って実際はAIに出力させるという商売は“詐欺的”であるといわざるを得ない。
現にイラスト制作のマッチングサイトであるSkebはいち早く「Skebでは現在、ツールとしてのAIの利用を一律して認めていない」と創業者が表明しており、AIイラストを販売することは利用規約違反であると警鐘を鳴らしている。ただし、いくら運営者側が禁止をしても出品者側に悪意のあるものが混じっていれば、そのような不正行為は100%なくなるとはいえない。
従って、われわれ“人間”の立場としては、AIの弱点を学習し、オリジナルのコンテンツなのかを鑑定できる眼を養っていくことが求められてくるだろう。
ちなみに、現段階におけるAIイラストの弱点は、主に「身体の構造」や「手癖」にある。AIのイラストは人間を人間としてイメージして描いているというよりは、学習したデータを解析して「腕は2本」といった「確かそうな人間像」を出力する。そのため、先ほどの例のように「背中の真ん中の線は1本しかない」とわれわれが暗黙的に理解しているような身体的特徴や、人間のイラストレーターでも体得に苦労する「耳」や「手」といった複雑な構造を有する部分を正確に描画できるAIは少ない。従って、AIイラストを見破る上では、第一にイラストの手や耳のような体の部分に違和感がないかを確認すべきだろう。
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