この場合、評価への不満は相対的に少ないと思われます。いますぐ大きな実害が生じるわけではないからです。もちろん、放置して良いわけではないので、問題があれば改善策を講じるべきです。
評価への関心及び不満は相対的に高くなります。賃金、賞与の差、昇進・昇格の差が年功序列時代よりずっと大きくなり、また、めったに行われなかった降格人事、降給も行われるようになるわけですから、当然と言えます。
人事処遇・賃金の差がはっきりと出る制度において、その基になる人事評価への不満が強いと、会社の活力は損なわれ、離職にもつながります。
また、降格人事、降給は労働条件の不利益変更にあたり、有効・無効が裁判で争われることも少なくありません。
不利益変更の有効性は、「合理性」が判断基準となります。人事評価によって降給・降格もあるという人事・賃金制度自体は、就業規則に定めて周知しているなどの条件が整っていれば問題ありませんが、人事評価の結果が明らかに偏向しているなど、運用に問題が大きかったような場合、個々の降給・降格が無効となる可能性はあります。
評価者、会社は、客観的な評価に努めることと、評価の根拠をきちんと説明できるようにしておくことが最低限必要です。そのためにも、次回でご説明する人事評価エラーについて理解しておく必要があります。
だからといって、不満・トラブルを恐れて高めに評価すればいいというものではありません。
これは次回解説する評価者エラーの一つ「寛大化傾向」にも関係しますが、このような評価は、「やってもやらなくてもいい」「この程度でいい」という誤ったメッセージを全社にまき散らすことになり、ある意味最も危険な人材マネジメントです。
特に次のような評価を付けているケースが見られますが、してはいけません。
後編では、具体的な人事評価エラーと対処法についてお伝えします。
社会保険労務士法人ヒューマンキャピタル代表。
早稲田大学商学部卒業後、大手電機メーカー人事部、大手ビジネス系出版社人事部で採用、研修、人事・賃金制度構築・運用、勤怠管理制度構築、労使関係、就業規則作成・改定、人事業務アウトソーシングなどの業務に従事。
就業規則、人事・賃金制度、会社のメンタルヘルス対応、労働時間管理、非正社員活用、労務トラブルなどでコンサルティング・アドバイザー業務を手掛けている。
Webサイトはこちら。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング