今回の誤報騒動では経営陣の処分に関する話が全く出てきていないが、過去の事例ではどうか。近年テレビ局で社長辞任に結び付いた誤報は2件ある。
1つは09年に日本テレビで起きた「真相報道バンキシャ!」の誤報だ。岐阜県の土木事務所が裏金作りを行っていると番組で報じたが、後に取材をした男性が虚偽の証言をしていたことが判明する。当時の社長は、誤報に関することの重大性を全社員に認識させるため、と引責辞任した。
もう1つは07年に関西テレビで起きた「発掘!あるある大事典II」のデータ捏造事件だ。番組内で報じた納豆によるダイエット効果に捏造があったとして、番組を放送した1月のうちに放送が打ち切られ、当時の社長が辞任することとなる。これは正確に言えば捏造だが、間違った情報が報じられたという意味では同じカテゴリーに入る。
2つの事件と比べても、今回の誤報は被害がほとんどない軽微なトラブルと言えるかもしれない。名前を勝手に出された電通も、すぐに訂正・謝罪が行われていることや、違法行為や問題行動を行ったという話でもないことから、今回の誤報が電通のブランドや実際のビジネスにどれだけ影響があるか、と考えればほぼゼロだろう。被害を受けたのは信用を失ったテレビ朝日だけで、自業自得と言えばそれまでだ。
だから問題はないかというと当然そんなことはなく、誤報そのものに加えて報道機関として誤報を生む体制があったことは許されるはずもない。
もちろん、社長の辞任や番組の打ち切りが唯一正しい責任の取り方であると言うつもりは一切ない。今後の対応を視聴者と株主が判断すればいいだけだ。
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