国土交通省の担当者によると、車検証の電子化については、18年に検討会が発足し、議論がなされた。当時はデジタル庁が発足する以前だが、前身となる内閣官房の情報通信技術総合戦略室の担当者も検討会に参加していたという。
20年6月に検討会が発表した報告書を確認すると、当時は車検証の完全電子化も検討されていたことがうかがえる。しかし、インターネット接続環境や導入コスト、普及性などを考慮した末、紙+ICタグの方式に落ち着いたようだ。道路運送車両法66条でも「自動車は、自動車検査証を備え付け、かつ、国土交通省令で定めるところにより検査標章を表示しなければ、運行の用に供してはならない」などとしている。
担当者によると、デジタル庁とはその後も連携を続けており、車検証閲覧アプリの設計などでも助言をもらっていたという。しかしながら、デジタル庁が目標に掲げる「デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げること」と比較すると、やや物足りなく感じる。
もちろん、民間企業と官公庁の性質は異なる。しかし、ことデジタル庁では民間企業出身の人材採用をアピールしたり、またマイナポータルの利用規約を巡って河野太郎デジタル相が「民間のインターネットサービスの利用規約と比べて、極めて一般的なもので特殊な要素はない」と話したりするなど、これまでの官公庁像から脱却した運営を志向していることがうかがえる。
日本企業のDXでは、“仏作って魂入れず”のように、デジタル化のお題目やツール導入のみが先行し、本質的な課題解決につながらないケースが散見される。こうした悪習を踏襲するのではなく、企業の理想となるようなモデルケースを今後は期待したい。
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