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5兆円が動く「ESG指数」 選ばれる企業になるために必要なことは?気候変動格付け対応の鉄則(1/3 ページ)

» 2022年11月15日 08時00分 公開
[中西享ITmedia]

 気候変動対策を重視する経営思考が強まってきた。二酸化炭素(CO2)排出量の削減度合いが投資家の企業評価につながり、株価にも影響する時代が到来したからだ。環境対策の本気度が、いま経営者に問われている。

 こうした流れを受けてCO2の排出量を可視化し、削減手法までをアドバイスする環境コンサルティングビジネスが売り上げを大きく伸ばしている。

photo ブルードットグリーンの売上高(エスプールの2022年11月期[第23期]第3四半期の決算資料より)

 環境省から転職して、環境経営のコンサルティングを手掛けるブルードットグリーン(東京都千代田区)のトップに就任した八林公平社長に、前編では気候変動コンサルの現状と課題を聞いた。

 後編では、評価機関からの「気候変動格付け」に対応し、「ESG指数」に組み込まれる仕組みを聞いた。

 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のWebサイトによれば、GPIFは企業が公開する非財務情報などをもとに、指数会社が企業のESGへの取り組みを評価して組み入れ銘柄を決める「ESG指数」に基づいた株式投資をしている。

photo GPIFが採用するESG指数の一覧(GPIFのWebサイトより)

 中でも運用額が最大の「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」では、2022年3月末時点で国内株と外国株を合わせて約5兆円が運用されている。

photo 八林公平(やつばやし・こうへい)1983年生まれ。2006年に環境省に入省、10年に転職して北海道下川町にて木質バイオ・再生エネルギー地域政策に従事。19年にブルードットグリーンのアドバイザーに就き、20年6月に同社社長に就任。39歳。横浜市出身。

カーボンニュートラル宣言が転機

――ブルードットグリーンの顧客は500社以上に増えてきていますが、大半が東京証券取引所のプライムに上場している企業ですか? 上場企業でも、そうした開示をする義務が求められているのでしょうか。

 多くがプライム企業です。プライム企業に対して東証は、コーポレートガバナンスコードの中で気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づく情報開示を義務付けています。定量的に開示できないところは定性的な開示にとどまっている企業もありますが、開示の要請は強まってくると思います。

 これくらいの規模で気候変動に関するコンサルをしている企業としては弊社はシェアトップだと思っています。

photo 気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言などでの開示要請の強まり

――顧客数も伸びているようですが、いつごろから何がきっかけで顕著に増え始めたのでしょうか。

 20年秋に菅義偉前首相がカーボンニュートラルを宣言したことがきっかけです。企業も「本気だな」と思うようになり、東証のガバナンスコードが良いタイミングで改定されてきたので、ここ1〜2年は激しい波になっています。

 業種的には全ての業種で、企業からの要請としてはCO2の排出量の細かい算定・分析よりも、まずは開示の体裁を整えたいという要求が多いです。

 開示はTCFDと、気候変動についての評価機関「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)」からの要求が大きなものになっています。

photo ESGインデックスなどでの評価項目への組み込み(以下、資料はブルードットグリーン提供)
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