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ヤマハ発動機・日高祥博社長に聞く「EVの先行き」 エンジンはなくならないヤマハ発動機の展望【後編】(1/6 ページ)

» 2021年12月16日 05時00分 公開
[中西享, 河嶌太郎ITmedia]

 コロナ禍を追い風にして好業績を上げているヤマハ発動機。記事の前編【海外売上比率9割の衝撃 ヤマハ発動機・日高祥博社長が2年連続「DX銘柄」に押し上げた軌跡を追う】では、同社がいかにしてDXを推進してきたかに迫った。

 同社は電動アシスト自転車や自動運転搬送車両などパーソナルモビリティでも存在感を発揮している。

 後編では、「電動アシスト自転車は欧州などからの注文が急増して生産が追い付かない状態」という日高祥博社長(高は正確には「はしごだか」)に、同社が得意とするパーソナルモビリティの展望やEV(電気自動車)の先行きなどを聞いた。

日高祥博(ひだか・よしひろ)1987年にヤマハ発動機に入社、2013年MC事業本部第3事業部長、17年に取締役上席執行役員、18年から社長。20年から日本自動車工業会副会長。愛知県出身。58歳(撮影:河嶌太郎)

「売れる分だけ作る」

――売り上げの6割を占めるランドモビリティの売れ行きが好調なようです。その要因は何ですか。

 アセアン(ASEAN)向けが一番利益を出しています。ヤマハ発動機は、リーマンショック前後で販売のコンセプトを変えました。ショックの前は「作った分だけ売る」というビジネスモデルで、売れなかったら半値八掛けで、たたき売るというやり方でした。ただ、これだと工場もすぐには生産にブレーキを踏めないので、あっという間に在庫が膨れ上がって、資金繰りが苦しくなるのを経験しました。

 それでリーマンショック後は、値引きして販売するのは止めて、デル・モデルといわれる「売れたら作る」やり方に変えました。

 具体的には、販売店の在庫を「見える化」して、いま在庫がどこに何台あるかが分かるようにし、適正在庫分しか卸さないようにしています。現時点ではまだ完璧にはできていませんが、販売店が報告してくれればコネクテッド技術を使って可能になります。いまは販売店にこの方法で納得してもらい、理解していただけるのを待っています。

 販売店は在庫を抱えたがるのが習い性になっていたので、欧州では2010年以降、適正在庫以上には卸さないようにしました。そうすると販売店側も「これで十分回る」ことに気付いてくれて、協力してくれる店が増えてきました。こうしたことを10年以上かけて各市場で取り組んでいます。

世界最高峰の二輪レース「MotoGP」に1961年から参戦し続け、今年60周年を迎えた
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