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» 2021年12月15日 05時00分 公開

海外売上比率9割の衝撃 ヤマハ発動機・日高祥博社長が2年連続「DX銘柄」に押し上げた軌跡を追うヤマハ発動機の展望【前編】(1/4 ページ)

2輪、電動アシスト自転車、マリンといった事業まで幅広い分野を手掛けるヤマハ発動機。海外売上比率は約9割(89.6%)に上っており、まさに日本を代表するグローバルカンパニーだ。社内改革を進める日高祥博社長に今後の展望を聞いた。

[中西享, 河嶌太郎,ITmedia]

 2輪、電動アシスト自転車、マリンといった事業まで幅広い分野を手掛けるヤマハ発動機。海外売上比率は約9割(89.6%)に上っており、まさに日本を代表するグローバルカンパニーだ。同社がコロナ禍を追い風に、DXをテコにして事業を大きく伸ばそうとしている。

 「経営の重点課題としてDXに取り組んでいる。マーケティング、開発、生産部門の全てでデータを活用して無駄をなくし、新たな時間を生み出せるようになった」と語るのは同社の日高祥博社長(高は正確には「はしごだか」)だ。その成果として経済産業省と東京証券取引所が主催する「DX銘柄2021」に選定された。選定は2年連続だ。

 ただ、日高社長は「DXは世間でいえばまだ一周遅れ」と話す。「社員のマインドセットを変えて先頭を進みたい」と意気込み、社内改革を進める日高社長に今後の展望を聞いた。

日高祥博(ひだか・よしひろ)1987年にヤマハ発動機に入社、2013年MC事業本部第3事業部長、17年に取締役上席執行役員、18年から社長。20年から日本自動車工業会副会長。愛知県出身。58歳(撮影:河嶌太郎)

地道に、着実に

――経営の中で、DXをどう位置付けてきましたか。

 経営の重点課題として地道に取り組んできました。中期的な経営基盤の強化と、成長戦略がその両輪です。イノベーティブで新しいビジネスモデルといったような派手さはないかもしれませんが、DXには継続して成果を出しながら着実に取り組んできました。

 生産性を上げて、コストの低減にも寄与するプリミティブな部分から、今後は段階的にレベルアップして真の意味でのDXにつなげていきたいと思っています。こうした取り組みが評価されたのだと思いますが、DX銘柄に選ばれて光栄です。

ヤマハ発動機の本社

――社内でDXを推進する上で、最も苦労したのはどこですか。

 ある方から、DXのデジタルの「D」は小さくても、トランスフォームする「X」が大事だと聞きました。当社はまだDが大きく、Xは小さい状況です。

 DXは階層的に3段階あると考えています。一番ベースの段階は競争力のある経営システムを構築することによって10年先を見据え、「会社を変える」ことです。2番目も、当社がいま取り組んでいることなのですが、既存事業をデジタルで強化することによって「今を強くする」ことです。3番目は真のDXで「未来を創(つく)ること」です。将来的にはこのレベルを目指そうとしています。

 これまでは能力のあるIT部門の社員が、全てのシステムを自前で作ってくれていました。ただ、それが全体最適ではなく、個別最適の状態になっていたのです。社員が優秀であるがために、社内からの要望に何でも応える「御用聞き」になっていました。会社全体のためになっているかというと懐疑的でした。

 無理やり個別のシステムを作っていたので、連結経営をする上でExcel(エクセル)にデータを落とさなければならないなど時間がかかり、多くの問題を抱えている状態でした。過去30年間、このやり方が差別化要因になると思ってやってきましたが、デジタル技術の進歩により、あだになっていたのです。

 そこで、このやり方を変えることにしました。世の中からは一周遅れていたのかもしれませんが、グローバルで統一したシステムを入れるためにDXを重視すると決断しました。並行して、「今」を強くするため、マーケティング、工場、開発部門をデジタル化して、それをつなぐデータ基盤に横ぐしを入れました。さらにデータ分析のための人材の育成もしました。 

 そうすることで、これまで開発に3年掛かっていたのが2年に短縮できるようになりました。また、工場で人が担っていた工程を機械に置き換えるなどして時間を生み出しました。これからは、その空いた時間を使って将来の「DX3」をやりたいと思っています。ただし、現状では目の前の仕事が忙しいこともあり、無理、無駄の多い「DX1」と「DX2」を一生懸命やっている段階です。

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