「サクマ式ドロップス」製造元が廃業に追い込まれた、これだけの理由スピン経済の歩き方(4/7 ページ)

» 2022年11月15日 09時46分 公開
[窪田順生ITmedia]

苦戦を強いられた背景

 こういう血で血を洗うレッドオーシャンは厳しい言い方だが、弱い者から力尽きる。ものを言うのはテレビCMなど宣伝力や、薬局やスーパーの売り場を確保できるのかという「ねじ込む力」だからだ。

 実際、同社がかなり苦しい戦いを強いられていたことは、横倉社長のコメントからもうかがえる。新聞記者に健康志向の市場が大にぎわいで、「健康」や「医薬」を掲げた佐久間製菓にとっても飛躍のチャンスではと水を向けられて、社長はこんな愚痴をこぼしている。

 「宣伝力では総合菓子メーカーにかなわない。当社のスローガンなどどこかに忘れられてしまいそう」(日経産業新聞 1998年9月1日)

 この時期、佐久間製菓は大手油脂メーカーと協力して、ビフィズス菌を閉じ込めたヨーグルトキャンディを開発した。薬剤を患部まで直接送り届けるという医薬品の技術を応用したもので、菓子に応用したのは異例のことだった。

(出典:佐久間製菓)

 しかし、残念ながら、そんな画期的な技術を応用した「おなかの友だちヨーグルト」は、「サクマ式ドロップス」に代わるような主力商品にはならなかった。

活きた乳酸菌ヨーグルト(出典:佐久間製菓)

 もちろん、その後も佐久間製菓はさまざまなチャレンジを続けた。99年にはこれまでの強みを生かして医薬品部外品の「エチケットロップ」も販売した。

 だが、これらの画期的に新製品が現在、販売されていないことからも分かるように、横倉社長がかつて「生き残り」のために目指した、医薬品や健康志向品を新たな成長のエンジンに……というところまではいかなかったようだ。

 その厳しい現実をよく示しているのが、同社の公式Webサイトだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.