「サクマ式ドロップス」製造元が廃業に追い込まれた、これだけの理由スピン経済の歩き方(5/7 ページ)

» 2022年11月15日 09時46分 公開
[窪田順生ITmedia]

「強み」が「弱み」に

 トップ画面から「サクマ式ドロップス」の画像が大きく掲載され、「皆さまに愛されて114年」とある。社名の横にも「サクマ式ドロップス」の画像があり、主力商品として大きく打ち出していることが分かる。かつて社運をかけてチャレンジをした分野は「ヘルシーライフ」というカテゴリーになっているが、それほど大きな扱いではない。

佐久間製菓の公式Webサイト

 断っておくが、佐久間製菓の経営判断が誤っていたなどと指摘したいわけではない。ここが、中小企業の経営の最も難しいところだと言いたいだけだ。

 これまで見てきたように「サクマ式ドロップス」で地位を確立した佐久間製菓は、菓子メーカーでありながらも医薬品を製造できるほどの高い技術力に自信があって、そこを「強み」と捉えていたことが分かる。「サクマ式」という画期的な菓子製法を生み出した創業者のDNAを引き継いでいるのだから当然だ。

 しかし、その「強み」が「弱み」になってしまった。

 競合や老舗製薬会社などが既に激しい競争を繰り広げているレッドオーシャンに自ら飛び込んで、巨大資本を相手に消耗戦を戦ってしまったのは、自分たちの高い技術力を「過信」していたからだ。技術さえあれば、この劣勢をひっくり返すことができると信じたからではないのか。

(出典:佐久間製菓)

 これまで取材やコンサルで、さまざまな中小企業を見てきたが、経営がたちゆかなくなってしまう中小企業は、こういう「技術至上主義」に陥っているケースが多い。高い技術力があるだけに、そこに固執し自分で自分の首を絞めてしまうのである。

 もし佐久間製菓が「医薬品」や「健康志向」などに参入しても勝ち目はないと判断して、「多角経営」の方向性を変えていたら、どうなっていたのか。例えばの話だが、「サクマ式ドロップス」のブランドを使って、グミ、アイス、さらには飲料などに広げて、カフェ経営などしていたらどうか。「サクマ式ドロップス」への依存を強めて、もっと早くに廃業していたかもしれないし、あるいは――。

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