3代目までのプリウスは、ハイブリッドの代名詞的存在とも言えるクルマであったことは確かだ。しかし今やトヨタの乗用車のほとんどにハイブリッドが用意されており、プリウスだけが特別なクルマではない。
むしろSUV人気、ミニバン需要があるなか、燃費性能以外に魅力が乏しいクルマでは訴求力に乏しくなる。プリウスの存在意義を見出せなくなってきたのは、乗用車全体の燃費性能が向上したことも影響している。そういった意味では一定の役割は果たした感がある。
欧州市場ではEVへのシフトが進み、エンジン車不要論が定着しつつある。欧州メーカーにとっては制御が複雑で燃費性能を高めることが難しいハイブリッド車を増やして採算性を確保するよりも、EVへのシフトのほうが分かりやすく、ユーザーに自社の姿勢が理解されやすい。そのためハイブリッド車も販売規制によって、市場から排除されそうな気配(現時点では将来的に導入される規制の対象となっている)だ。
クラウンが国内専用モデルから脱却して世界市場へと進出するのと同様に、プリウスも世界市場で勝負していくという新たな使命を受けたクルマとなった。そのためには、燃費性能以外の魅力を携えたクルマでなければいけない。
トヨタがTHS(トヨタハイブリッドシステムの略=遊星歯車機構を利用したストロングハイブリッド)の基本特許を公開しても、欧州メーカーがその構造を採用しなかったのは、プライドやサプライヤーとの関係への影響もあるが、高速走行時の走行フィールへの懸念も大きな理由だった。
いまだMT車の比率が高い欧州では、運転を楽しむユーザーが多く、クルマに対してダイレクトな反応を求める傾向が強い。CVT(無段変速機)がなかなか受け入れられないのと同様に、THSのシームレスで捉えどころのない加速感は欧州のドライバーにとって魅力的に映らないのである。
そこで開発陣は、プリウスにインパクトのある走行性能を与えることで、新たな存在価値をアピールすることにしたのだ。これがプリウスに与えられた新たな使命だ。それが2Lエンジンの投入とモーター出力のアップ、さらなるシャーシのチューニングによるハイブリッド・スポーツセダンへの転身だった。
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