クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

なぜプリウスは“大変身”したのか トヨタが狙う世界市場での逆転策高根英幸 「クルマのミライ」(5/6 ページ)

» 2022年11月24日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

NからDへのシフト操作に安全装置をつけるべき

 それと筆者が唯一心配しているのは、プリウスのシフト操作と加速力が悲劇を生まないか、ということだ。ほとんどのクルマは停止中ブレーキを踏んでいないとNレンジからDレンジへのシフト操作はできないが、プリウスを含んだ数車種はアクセルを踏み込んだままNからDへとシフトできるのだ。

新型プリウスのプロトタイプのインテリア。前方のメーターパネルと中央のディスプレイによるレイアウトは先代のイメージを引き継いでいるが、水平基調を強めた印象でモダンなイメージを強調している。注目はシフトレバーだが、表示を見る限り先代を踏襲しているようだ

 思い起こされるのは1980年代後期、ドイツのアウディ車で多発したAT車の暴走事故だ。原因はペダルの踏み間違いなのか、アイドル回転数補正装置の欠陥か。結局、明らかにされていないものの、アウディはそれ以来ブレーキペダルを踏んでいないとシフト操作ができないシフトロック機構(エンジン停止中にシフト操作を可能とするシフトロック機構とは異なる)を採用し、それは他メーカーにも普及している。

 このシフトロック機構をこれまでプリウスが採用してこなかったのは、シフト操作で先進性を印象付けることやTHSならではの変速機構造が理由なのかもしれない。だが、シフトロック機構自体を盛り込むことは今日のクルマではソフトウェアの変更だけでも可能(物理的にはレバーは動かせても、シフトを禁止できる)な場合が多い。

 同様のシフト機構を採用しているJPNタクシーはリコールでブレーキペダル連動のシフト機構へと操作方法を改めているのに対し、プリウスはそのままだ。リコールとなれば対象台数がケタ違いになるとはいえ、ユーザーの安全を考えれば、改めてほしいと思うのは筆者だけではあるまい。

 公開されている室内の画像を見る限り、新型プリウスも先代までと同様のシフト機構を継承しているようなので、せめてこれにシフトロック機構を盛り込んでほしいと思う。

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