クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

なぜプリウスは“大変身”したのか トヨタが狙う世界市場での逆転策高根英幸 「クルマのミライ」(4/6 ページ)

» 2022年11月24日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

1.8Lは国内市場向けか、ならばいっそ1.5Lでも

 もちろんこれまでのプリウスユーザーへの配慮も忘れていない。それが1.8Lエンジンを残したことだ。だが個人的にはエントリーグレードは1.5L3気筒エンジンを搭載し、モーターとバッテリーを強化したモデルであってもよかったのではないか、と思っている。モーターより加速性能の確保ができれば、エンジンはより小さくて済む。

 エンジンの種類が増えればトータルでの生産コストは上昇し、1台当たりの利益を薄めてしまう可能性がある。しかし国内市場を見ると、円安や原油高の影響で燃料価格も高騰し、1年間の走行距離が縮小傾向にある。

 そのため120キロが最高速度の高速道路でさえ、100キロ以下で巡航するドライバーが多い現状をかえり見れば、求められるのは燃費性能と税金を含めた維持費のトータルコストだ。

 新型のスタイリングと室内空間、それに燃費性能だけを求める層には十分な動力性能があり、税金面での負担がヤリスと変わらないのであれば、室内が広く快適で高級感も高いプリウスを選ぶ、というユーザーも増えるのではないだろうか。

 スポーティーなスタイリングと高い動力性能、燃費性能を両立すれば海外では“プリウスショック”を引き起こせるかもしれない。だが国内市場ではスポーツカーの販売台数が極めて少ないことからも、加速力の強化を喜ぶ層は、それほど多くはなさそうで、「クルマの高性能=速さ」というのは、もはや古い感覚と言えるのかもしれない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.