メンタル不調で休職中の部下が、別の職場でバイトしていた 許されるのか?Q&A 社労士に聞く、現場のギモン(1/2 ページ)

» 2022年12月01日 05時00分 公開
[卯城恒生ITmedia]

連載:Q&A 社労士に聞く、現場のギモン

働き方に対する現場の疑問を、社労士がQ&A形式で回答します。

Q: 私の部下は医師からメンタル不調であるとの診断を受け、数カ月前から休職しています。ゆっくり静養しているものとばかり思っていましたが、別の社員による目撃情報で、会社とは全く関係のない飲食店でアルバイトをしていることが判明しました。

 本人は「体調に波があるため現時点で職場復帰するのは難しいが、時間に融通の利く知人の店でアルバイトをしながら復帰の準備をしようと思った」と話しています。復職を目指す気持ちは尊重したい半面、休職中の者が会社に内緒で別の職場で働くのはまずいのではないのでしょうか。上司として対応に悩んでいます。

photo 休職中の部下が会社に内緒でアルバイト 問題ないのか?(画像はイメージです。提供:ゲッティイメージズ)

休職中の勝手なアルバイトは問題ない? 社労士が解説

 休職とは、病気やけがなど従業員自身の原因で業務に就くことができない場合に、その期間の就労義務を免除する制度のことをいいます。休職は法律で定められた制度ではなく、就業規則などによりルールを定めることになるため、休職の事由や休職期間、その他復職時の取り扱いなどは、会社ごとに異なります。

 そもそも従業員には労働契約に基づき、労務を誠実に提供する義務があります。病気による休職中も労働契約における誠実義務は残ることから、休職中は治療回復に専念することが求められます。

 療養中に意図して回復を遅らせるような行為をした場合には、誠実義務違反となることも考えられます。本件ではそのような悪意は見られず、復職に向けての前向きなアクションであったようですが、療養のために休職を認めた会社としては複雑な心境ですね。

自社のルールに違反する場合は懲戒を検討

 休職中における他社での就労について、会社の就業規則でどのように定められているか見てみましょう。令和2年度の厚生労働省の調査(※1)では、約4割の会社が何らかの形で副業・兼業を認めているという結果があります。とはいえ、多くの場合は自由に副業・兼業ができるという形ではなく、同業他社以外での就業に限った上で事前に許可を受けるか届け出をすることを要件としているところが多いようです。

(※1)副業・兼業に係る実態把握の内容等について/第131回労働政策審議会安全衛生分科会

 今回のケースでは、別の従業員による目撃情報により他社での就労が判明しているため、事前に許可あるいは届け出をしていたというわけではなさそうです。この事実が会社で定める副業・兼業のルールに違反している場合には、懲戒事由に該当するおそれがあります。ただし、副業・兼業を行った期間や頻度、携わっていた業務の内容などによって懲戒の程度を判断する必要があります。

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