昨今では夫婦ともに働く共稼ぎ世帯が珍しくなくなりました。最低賃金のアップや同一労働同一賃金など国の施策により、パート社員や派遣社員の待遇は、少しずつ改善されています。そのため、平均年収が多少下がったとしても、世帯年収は以前より増えているかもしれません。
世帯年収が増えるのは喜ばしいことですが、筆者は管理職ポストに就く人も多いであろう40代正社員の年収が減少傾向にあることは、深刻に捉えるべきだと考えます。
国税庁の調査を見ると、一家の大黒柱である40代の平均年収の減少幅が大きくなっています。1997年と2021年を比較したところ、40〜44歳では645万円から584万円となって年間61万円減。45〜49歳も695万円から630万円となって年間65万円も減っています。
世帯主が正社員として働き、配偶者が補助的に非正規社員として働く世帯では、配偶者の年収が上がっても世帯主の収入減を補てんできない状況になっている可能性もあります。
では、なぜ中高年の平均年収が下がったのでしょうか? それは40代になっても課長以上の管理職になれない、あるいは係長や主任といった役職にも就けない平社員が増えたからです。労務行政研究所が21年、上場企業を中心に調査した職位別の賃金は次のようになっております。
部長の年収水準を100とすると一般社員は40程度に留まります。上場企業に勤務していたとしても、昇進しなければ十分な給料をもらえない人が多いのです。年功序列で一般社員にもある程度の賃金まで上げてくれる優しい会社もありますが少数でしょう。男女雇用機会均等法が施行されてから、長い時間が経つのに女性の賃金が男性と比べて低いのは、管理職に就く人が少ないからです。直近の調査によれば、管理職における女性の割合は、9.4%に留まっています。
昭和や平成の初期の時代は、年功序列により誰しもが管理職に就けたのでしょうか? 正確にはそうでもありませんでした。管理職になるような人材は、実務能力以外のリーダーシップなど先天的な要素も必要なため、ある意味限られています。
管理職の素質がない人でも「担当部長」「課長代理」「副部長」などいわゆる“部下なし管理職”の地位に就けました。部長か課長と比べて権限はないものの、管理職に準ずる給料をもらえていたのです。真面目に一つの会社に勤務していていれば、ある程度の給料はもらえていた恵まれた時代だったのです。
競争力の激化に伴い意思決定のスピードアップを求められるようになったため、こうした部下なし管理職は減ってきて、その代わり40代、50代でも一般社員に留まる人が増えてきたのです。定年の延長に伴い60歳以上の社員にも原資を回す必要がでてきたなどの企業側の事情もあります。
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