40代正社員の平均年収が下がっている意外な理由とは? 24年間で約60万円も減少企業の対応は?(3/3 ページ)

» 2022年12月08日 08時00分 公開
[佐藤敦規ITmedia]
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専門職に高い報酬を支払う制度が必要

 これから急務なのは、管理職コースとは別に、専門職コースのような「管理職にはなれないものの、高度な専門知識や実務能力を持っている人にも高い報酬を支払う」タイプの職務等級制度の設計です。特定の分野で専門的な知識や能力を評価することで管理職や役員と同じように評価され、昇給するという仕組みを指します。

 DXに関する技術力を持った人材や、特定の資格を有する人材が対象となります。すでに制度を導入している企業もありますが、大企業が中心で中小企業ではあまり浸透していない印象があります。

役割等級制度の導入検討状況(出所:Works Human Intelligence「ジョブ型雇用に関する調査」)

 なぜこうした制度を設ける必要があるのかというと、昨今、育成の重要性が叫ばれているDX人材はまさに専門職に該当するからです。プロデュサーなどの従来の管理職を踏襲する人もいますが、AIエンジニア、プログラマー、データサイエンティスト、UXデザイナー、アーキテクトといった専門家が中心です。こうした人達に管理職に準じる給与を支払わないとDX人材は育っていかないでしょう。

 中小企業では、DXが喫緊の課題とされています。社内のデジタル化を任された若手社員が、仕事だけ増えて評価も給料も上がらず、モチベーションが下がり辞めてしまうケースも聞きます。国や評論家が生産性向上のためにDX人材の育成が必要だと声高に叫んでも絵に描いた餅になってしまうのです。

 また職務等級制度がない中小企業では、DX人材を中途採用する際、一定の給与を支給するため管理職に任命することもありますが、本人のタイプや家庭の事情から管理職の業務量をこなすことが難しく、短期間で離職してしまう人もいます。管理職は難しくても専門職としてキャリアを積みたいと考える人のために選択肢を用意することが必要です。

評価制度の導入が急務

 職務等級制度がない中小企業が多いのは、クライアントによって仕事量が左右されることが多いため、一つの仕事に専念できず雑務も含めてなんでも屋的に業務を求められる特有の事情もあります。

 加えて、評価制度が存在せず、職位によるざっくりとした賃金テーブルしかないことも要因です。専門職の評価は、その業務に精通した人でしかしにくいという意見もあります。ただこのような考えに固執していると、いつまで経っても評価制度は作れず、専門職制度を設けられません。業務について数値化できる要素を増やすなどして簡潔なものでよいので導入すべきです。作成にあたって専門家の支援を仰ぐのもよいでしょう。

 管理職としての昇進する以外にも給与が上がる道を作る。それが給与の底上げにつながり、DX人材の育成という課題にも対応できると考えます。

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