登山人口は減っているのに、登山アプリ「YAMAP」が成長するワケ有料会員率20%(2/5 ページ)

» 2022年12月09日 08時00分 公開
[小林香織ITmedia]

ニッチな領域は熱量が高い

 13年3月に提供を開始した登山地図GPSアプリ「ヤマップ」には、主に2つの特徴がある。1つは、携帯の電波が届かない山の中でも自分の現在地と行き先を把握できること。もう1つは、登山の記録を「活動日記」としてシェアできるコミュニティー機能だ。

 サービスが先、利益は後というスタイルで、しばらくは無料で提供していたが、20年春に一部の機能を有料とする収益化を開始した。

 「幅がありますが、登山人口は大体700万人弱といわれています。市場開拓の際に乗り越えるべき溝であるキャズムで考えると、当社の場合140万人が一つの目安でした。ダウンロード数がそれを超えたタイミングで、サービス提供と利益を同時に追求しようと有料会員モデルに切り替えました」(春山氏)

登山人口を700万人と考えると、その半分弱がヤマップをダウンロードしていることになる

 アプリの有料会員率は、MAUの3〜5%で成功といわれ、当初はそれくらいの数字を想定していたと春山氏。しかし、ふたを開けてみるとヤマップの有料会員率は20〜25%で推移するようになった。

 この11月に有料会員「YAMAPプレミアム」の料金を年割プラン5700円 、月額プラン780円に値上げしているが、これまでのところ経営に影響を及ぼすようなネガティブな反響はないそうだ。有料会員は、全国の地図ダウンロードやルート探索が無制限にできる、ルートを外れたときに警告する、詳細な天気予報が見られるなど登山活動が充実する機能を多く備えている。

 「山登り専用のGPSや紙の地図は、決して安くはないんです。月500円程度でGPSや地図にプラスアルファの機能も使えるのは、むしろリーズナブルともいえます。多くの登山愛好家は、それを理解して正当な対価として支払ってくれているのだと思います。

 加えて、ニッチな領域のファンが持つ熱量の高さも有料会員の伸びにつながっているだろうと。ヤマップが誕生する以前は、ニッチ領域のアプリ収益化の事例がほとんどなかったと思います。収益化してみて従来のアプリサービスでは計れない可能性が、この市場にあることが分かりました」(春山氏)

 熱量の高いユーザーが口コミで広め、新たなユーザーを呼び込む。そんな循環が生まれ、ほぼプロモーションなしで100万ダウンロードを達成したそうだ。活動日記もアクティブに使われており、21年の投稿数は526万件(前年比149%)となり過去最高を記録した。

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