「青森でキャンペーンをやっていますよ」といったことを伝えるために、どのようなことをしたのか。ホテルのスタッフが手づくりでチラシをつくって、各部屋(236室)に置いて回った。で、結果はどうだったのか。「全室にチラシを置いたところ、3日でなくなりました」(青森屋の担当者)という。
その部屋に泊まった人は、気になったのでチラシを持って帰ったと考えられる。もちろん、全員がそのように考えているわけではないが、そのうちの何割かが投稿すると、数字がどーんと上がるに違いない。しかし、期待するほど、伸びなかった。この時点で「そもそもの企画がイマイチなのかもしれない」と“犯人捜し”が始まってもおかしくはなかったが、三保さんは違っていた。
「チラシを持ち帰るということは、興味を持たれている人がいるはず。別の方法できちんと伝えることができれば、投稿が増えるのではないか」と考えたのだ。
では、次にどんな手を打ったのか。宿泊客の行動をじっくり観察すると、館内のいわゆる“映えスポット”で写真を撮影している人がいる。しかも2〜3人ではなく、たくさんの人がパシャパシャ撮っている。そうした場所を投稿スポットとして、提案するのはどうだろうか。「りんごシュースが出る蛇口」「巨大りんご灯篭(とうろう)」といった青森らしさを感じられるスポットがあるので、そこにひと工夫を施した。
キャンペーンの主旨を方言で紹介しただけでなく、「ここで撮影すれば映える写真を撮れますよ」といった意味が伝わるように、床に「足のマーク」をつけたのだ。この話を聞いて、「はあ? それだけ?」と思われたかもしれないが、これは意外に効果があった。
新型コロナの感染が広がって、ソーシャルディスタンスを確保するために、床に「足のマーク」を描いているところが増えた。行動経済学で言うところの「ナッジ効果」(人を後押しするアプローチのこと)によって、キャンペーンに参加する人を“導いて”いったのだ。
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