マーケティング・シンカ論

「見飽きたキャンペーン」なのに、なぜ参加者が増えたのか 星野リゾートのちょっとした工夫週末に「へえ」な話(1/3 ページ)

» 2022年12月10日 09時12分 公開
[土肥義則ITmedia]

 「見飽きたキャンペーン」がある。といっても、その受け止め方は人それぞれだが、個人的にはSNSを使ったキャンペーンに「見飽きた感」を覚えている。

 例えば、公式アカウントをフォローして、「#(ハッシュタグ)」を付けて投稿すれば、抽選で「〇〇が当たる!」といったやつである。ちょっと調べただけでもたくさん出てきて、業界を問わず「#だらけ」とも言える状況である。

ネット上にさまざまなキャンペーンがあふれている(画像:ゲッティイメージズより)

 雨後の筍(たけのこ)のようにキャンペーンはたくさんあるので、企画の担当者は埋もれないようにあの手この手で、1人でも多くのファンを増やそうとチカラを入れている(投稿を増やそうとしている)。しかし、である。受け手側からすると目新しさを感じないので、PRの文言を目にしても「なんかやってるな」でおしまい。いや、ひっかかるだけでもマシなほうで、多くの人は景色が流れていくような感じで、キャンペーンの存在が記憶の片隅にも残っていないのかもしれない。

 そんなことをモヤモヤと考えていたら、「のれそれ青森旅キャンペーン」なるものを見つけた。「青森県×JAL×星野リゾート」の3者がタッグを組んでいて、2022年7月から展開している(12月からは第3弾を実施)。

「青森県×JAL×星野リゾート」の3者がタッグを組んで、「のれそれ青森旅キャンペーン」を実施

 キャンペーンの内容を紹介すると、もちろん「#」は欠かせない。Instagramで公式アカウント(@noresoreaomoritabi)をフォローして、「#のれそれ青森旅キャンペーン」と「#青森県、#JAL、#星野リゾート」のいずれかをつけて投稿すれば、抽選で2組4人に青森の旅をプレゼントするというもの。

 どうだろうか。「ザ・見飽きたキャンペーン」と思われたかもしれないが、その感覚は間違っていないかもしれない。というのも、キャンペーンのスタート以降、投稿したのは1日1〜2人ほど。この状況が2週間ほど続いたので、星野リゾート 青森屋で総支配人を務めている三保裕司さんは「これはマズい。なんとかしなければいけない」と受け止め、急きょ、ホテルのスタッフを集めて対策を練ることに。

星野リゾート 青森屋に設置されている「ねぶた」

 どこに問題があったのか、さまざまなことを洗い出していくと、スタッフ側に「まあなんとかなるでしょ」といった感じで、楽観的に受け止めている部分があったようだ。「3者でキャンペーンをやっていますよー」といった文言をアピールしなければいけないが、やったことといえば、Webサイトで紹介しただけ。

 しかもトップページの目立つところではなく、じっくり見なければ気付かないような位置である。このやり方だけだと「多くの人に伝わっていないのではないか」という仮説を立て、次の手を打つことにしたのだ。

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