取材を進めていく中で、気になることがひとつ浮かんだ。「苔さんぽ」と「氷瀑ツアー」はなぜヒットしたのか、である。始めるにあたって大きな予算があったわけでもなく、大々的にPRしたわけでもない。いや、どちらかといえば「地味」な企画である(失礼)。にもかかわらず、観光客の動きを変えた。
奥入瀬渓流ホテルで総支配人を務めている高橋伶央(高=はしご高)さんに、企画を考えるうえで大切にしていることを聞いたところ「ここでしかできないことに、こだわっている」という。「たくさんの種類の苔があること、複数の氷瀑があること、いずれもここでしか味わえないことですよね。逆にいうと、東京や大阪などでできることはやりません」(高橋さん)ときっぱり。
例えば、子どもの自由研究として「苔がどのくらい酸素を放出しているのか。そのことを実験で明らかにする」という企画案があったとしよう。この話を聞くと、「面白そうだなあ。小学生がいる保護者がたくさんやって来るよ」と思われたかもしれないが、実現することはない。東京や大阪などでもできるからだ。
企画を進めるうえで、大切なことがもうひとつある。「意外性」だ。なぜ「苔」なのか、なぜ「氷瀑」なのか。ぼけーっと歩いているだけだと、なかなか注目しないことにあえてスポットを当ててみる。ガイドが詳しく説明することで、「へえ、そうだったのか。知らなかった」と感じてもらう。どうやら、そこがポイントのようだ。
なにか面白い企画を提案してよ――。クライアントや上司などから、ムチャなことを言われたときどうすればいいのか。「ここでしかできないこと」「意外性」この2つを外さずに練っていけば、案外面白いものができるかもしれない。
いや、きっと“コケ”ないはずだ。
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