【育児休業の取得状況の公表Q&A】公表する項目・算定方法は?

» 2022年12月22日 05時00分 公開
[ITmedia]

「人事労務実務のQ&A」とは?

 『人事労務実務のQ&A』は初任者からベテランスタッフまで全ての人事・労務関係者の実務に役立てられるよう、人事・労務に関するタイムリーな話題や、いまさら聞くに聞けない基本的な事項などをQ&A形式で解説する月刊誌です。

 本記事は、2022年10月号に掲載された「改正育児・介護休業法の実務(下)/【執筆】弁護士・鹿野智之」の一部を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集し、転載したものです。

Q1: 育児休業の取得状況の公表とはどのようなことですか

 令和5年4月に施行される法改正により求められる育児休業の取得状況の公表とは、どのようなものなのでしょうか。

A1: 育児休業等(またはこれと育児目的休暇)の取得割合の公表

 男性労働者の(1)「育児休業等」の取得割合または(2)「育児休業等と育児目的休暇」の取得割合のいずれかの割合を、インターネットの利用その他適切な方法で、一般人が閲覧できるように公表することを指します。

※Q1の解説内容の参照元は厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」です。

photo 画像はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

1.育児休業の取得状況の公表

 男性の育児休業の取得率は、上昇傾向にあるものの女性に比べ低い水準となっています。

 そこで、男性の育児休業取得を促進するべく、法改正(令和5年4月1日施行)により、常時雇用する労働者が1000人を超える事業主は、男性の育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられることになりました。

 具体的には、男性労働者の(1)「育児休業等」の取得割合または(2)「育児休業等と育児目的休暇」の取得割合のいずれかの割合を、インターネットの利用その他適切な方法で、一般人が閲覧できるように公表する必要があります。

 ここにいう「常時雇用する労働者」とは、雇用契約の形態を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指し、次のような者は常時雇用する労働者となります。

  • 期間の定めなく雇用されている者
  • 一定の期間を定めて雇用されている者または日々雇用される者であってその雇用期間が反復更新されて事実上期間の定めなく雇用されている者と同等と認められる者。すなわち、過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者または雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者

 また、「育児休業等」については、産後パパ育休とそれ以外の育児休業等について分けて割合を計算する必要はなく、産後パパ育休も含めた育児休業等の取得者数について計算すれば問題ありません。

 なお、「インターネットの利用」とは、自社のWebサイトや厚生労働省が運営するWebサイトである『両立支援のひろば』の利用などを指します。

2.注意点

 公表に当たっては、以下の点に注意する必要があります。

(1)公表内容

 公表に当たっては、公表する割合とあわせて、以下の内容についても明示することが求められます。

  • 当該割合の算定期間である公表前事業年度の期間
  • (1)「育児休業等」の取得割合または(2)「育児休業等と育児目的休暇」の取得割合の、いずれの方法により算出したものか

(2)計算の対象など

 育児休業を分割して2回取得した場合や、育児休業と育児を目的とした休暇制度の両方を取得した場合などであっても、当該休業や休暇が同一の子について取得したものである場合は、1人として数える必要があります。

 また、事業年度をまたがって育児休業を取得した場合には育児休業を開始した日を含む事業年度の取得、分割して複数の事業年度において育児休業等を取得した場合には最初の育児休業等の取得のみが計算の対象となります。

Q2: 取得状況の公表で取得率はどのように算定するのですか

 育児休業等の取得の状況に関する取得率については、どのように算定するのでしょうか。

A2: 育児休業等をした男性労働者を配偶者が出産した者で除する等

 「公表前事業年度においてその雇用する男性労働者が育児休業等をしたものの数」を「公表前事業年度において、事業主が雇用する男性労働者であって、配偶者が出産したものの数」で除するなどにより算定されます。

※Q2の解説内容の参照元は育児・介護休業法2条1号、23条2項、24条1項、令和3年改正育児・介護休業法に関するQ&A、厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」、厚生労働省・都道府県労働局雇用環境・均等部(室)「育児・介護休業法のあらまし」です。

1.取得率の算定方法

 常時雇用する労働者が1000人を超える事業主は、育児休業等の取得の状況を年1回、(1)育児休業等の取得割合または、(2)育児休業等と育児目的休暇の取得割合の、いずれかをインターネットの利用その他適切な方法で、一般人が閲覧できるように公表する必要があります(Q1参照)。

 (1)および(2)に関する具体的な算定方法は以下の通りです。

(1)育児休業等の取得割合

 以下の(ア)を(イ)で除した(割った)数字をもって求めます。

  • (ア)公表前事業年度においてその雇用する男性労働者が育児休業等をしたものの数
  • (イ)公表前事業年度において、事業主が雇用する男性労働者であって、配偶者が出産したものの数

(2)育児休業等と育児目的休暇の取得割合

 以下の(ア)を(イ)で除した(割った)数字をもって求めます。

  • (ア)公表前事業年度においてその雇用する男性労働者が育児休業等をしたものの数および小学校就学の始期に達するまでの子を養育する男性労働者を雇用する事業主が講ずる育児を目的とした休暇制度を利用したものの数の合計数
  • (イ)公表前事業年度において、事業主が雇用する男性労働者であって、配偶者が出産したものの数

2.計算式に関する説明

 なお、上記の算定方法にある「公表前事業年度」とは、公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度をいいます。

 また、「育児休業等」とは、育児・介護休業法2条1号に規定する育児休業および同法23条2項(所定労働時間の短縮の代替措置として3歳未満の子を育てる労働者対象)または同法24条1項(小学校就学前の子を育てる労働者に関する努力義務)の規定に基づく措置として育児休業に関する制度に準ずる措置が講じられた場合の当該措置によりする休業のことを指します。

 さらに、「育児を目的とした休暇」とは、育児休業等および子の看護休暇を除く、目的の中に育児を目的とするものであることが明らかにされている休暇制度を指し、例えば、失効年休の育児目的での使用、いわゆる「配偶者出産休暇」制度、「育児参加奨励休暇」制度、子の入園式、卒園式等の行事や予防接種などの通院のための勤務時間中の外出を認める制度(法に基づく子の看護休暇を上回る範囲に限る)などが該当します。

著者プロフィール

鹿野智之(かの・ともゆき)弁護士

1975年生まれ。中央大学法学部卒業後、早稲田大学大学院法学研究科(民事法専攻)修士課程を修了。IT・通信系の企業で法務を専任。在職中、成蹊大学法科大学院(夜間)を経て、2014年司法試験合格。2015年弁護士登録(第一東京弁護士会)。外井・鹿野法律事務所所属。

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