「パンケーキ酷評」「大量食べ残し」……世界一の美食国・ニッポンで絶えない、“食の炎上事件”のなぜ22年飲食シーンを振り返る(3/5 ページ)

» 2022年12月29日 07時00分 公開
[東龍ITmedia]

 茨城県水戸市のラーメン店に、2人の女性客が来店した。1人だけがラーメンを注文し、1杯のラーメンを2人でシェアして食べたという。安さを売りとしているこの店は「商売にならない」と吐露し、「食べない方は外のベンチでお待ち頂きます」とTwitterで発信した。

 飲食店を営業するには保健所から飲食店営業許可を取る必要がある。食品衛生法によると飲食店営業とは「食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業」のこと。つまり、飲食店は店内で食べることを前提とした業態だ。

1杯のラーメンを2人でシェアし店主が「商売にならない」とSNS上で訴えた(ゲッティイメージズ)

 空間を維持するのにも、コストが必要となる。なぜならば、イスやテーブルを用意したり、調度品を飾ったり、灯りをつけたり、空調を整えたり、店内を清掃したりと、快適な空間を実現するのに費用が発生するからだ。つまり、飲食店では、客が着席し、店内の空間を専有しているだけでコストが発生する。

 2人分の席を専有しているにもかかわらず、1人分のラーメンしか注文しなければ、1席分が赤字となるのは明白。1席が余分に専有されることによって、他の客が来店する機会までも奪っている。

【第2位】フランス料理界の最高峰栄誉に日本人

 第2位は、関谷健一朗氏が今年、日本人として初めてM.O.F.(フランス国家最優秀職人章)の料理部門を受章したこと。 500人以上の応募があったが、その果実をもぎとれたのは、わずか8人だけだった。

 M.O.F.はフランス語で「Meilleur Ouvrier de France」の略称であり、フランス文化の最も優れた継承者にふさわしい高度な技術をもつ職人に与えられるフランス国家の称号であり、 1924年以来続く歴史あるコンクールだ。

M.O.F.フランス国家最優秀職人章を料理部門で受章した関谷健一朗氏(右、プレスリリースより)

 食の世界におけるM.O.F.は料理、製菓、パンなどの種別があり、フランス料理界最高峰の栄誉として認知されている。優れた技術力だけではなく、伝統への敬意、技術を習得した上での高い革新性や美意識、創作性や的確性も判断基準だ。コンクールに合格して称号を得た者だけが、栄誉あるトリコロールカラー襟のコックコートを着用できる。

 コンクールはフランス語で行われ、フランス人の後見人も必要なので、日本人にとって非常に難易度が高い。したがって、これまで料理部門でM.O.F.を受章した日本人はいなかった。

 受賞した関谷氏は1979年生まれ。06年からパリの「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」に勤務し、 26歳の若さでフランス料理界の巨匠である故ジョエル・ロブション氏がスーシェフ(副料理長)に抜擢(ばってき)したほどの料理人だ。

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