――病気によって1号店も畳むことになり、大きな転機になったのだと思います。考え方が変わった点はありましたか。
まずそれまでは自分一人で何でもできるという考えがありましたね。スタッフはいたのですが、いてもあまり頼らないというか、逆に言えば「何で俺ができるのにスタッフはできないんだ」という考え方もしていました。
でも、病気になって倒れたことで、「俺一人では何もできないんだ」と気付きました。スタッフやお客さんがいてうちが生かされている。そういうことを自分で理解できるようにならないと、自分自身が育っていかないといけないと考えるようになりました。
――その後、1店舗だけとなった「ひらこ屋」は行列ができる人気店に成長し、ラーメンデータベースでも青森県1位の人気店となっています。従業員との向き合い方を変えたのも成功の要因と言えそうです。
一人で作るラーメンから、みんなで作るラーメンという考え方に変わっていきましたね。やはり人で成り立っている商売なので、従業員とのコミュニケーションは大事にしながらやるようにしています。
一方で味の追求については、自分の意思を伝えて、ここにこだわっているんだよっていうのを従業員と確実に共有するようにしています。自分のこだわる味を従業員にも再現してもらう感じで進めているので、スタッフがやりづらいところはあるのかもしれません。
――「ひらこ屋」の味については、煮干し特有の苦味や臭みが苦手な人でも食べやすいと評判です。これは三上社長も煮干しが苦手だった経験も生きていそうですね。
味については、地元びいきな感じなんですけど、青森の方が好きな味をとにかく追求したんですね。そのためには自分も青森の味が分からないといけないんですけど、煮干しのラーメンは子どもの時から食べているもので、身体に染み付いています。
例えばにぼしの酸味とか、苦みとか、押さえ所というのがありまして、うちはもともと煮干しが苦手だったので、苦味を押さえたラーメンにしました。でも酸味は出すようにしています。
当店のこだわりとしては、煮干しのはらわたなどは9割ぐらいとって使っていますね。煮干しが好きな人でも楽しめるように、「濃口」と「あっさり」の2種類のスープを出しています。ただ、青森のラーメンの場合、「濃い」の定義がちょっと異なります。
――どう違う感じですか。
他では「濃い」というのは脂の濃さを指す場合が多いと思うのですが、青森の場合、煮干しの濃さを指しています。「濃口」も「あっさり」も、動物性の脂は入っていないのが主流です。なので、「濃口」でもすっきりした煮干しのパンチが効いたすっきり味っていう意味合いなんですよね。
――「濃口」でも脂そのものはそんなになく、食べやすいというわけですね。
そうですね。ただ、「あっさり」のほうがどちらかというと老若男女幅広く食べられています。
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