ラーメンの人気店として知られる「支那そばや」。“ラーメンの鬼”佐野実さんが1986年に神奈川県藤沢市で立ち上げた名店で、現在は横浜市戸塚に移して営業を続けている。2021年7月末から11月初旬にかけては、東京駅一番街「東京ラーメンストリート」でも出店し、盛況のうちに終わった。
現在、「支那そばや」の運営に関わり、東京ラーメンストリート店を切り盛りしていたのは“ラーメンの鬼”の娘、佐野史華さんであることはあまり知られていない。史華さんは父・佐野実さんが14年に亡くなったことを受け、10年以上勤めていた百貨店を退職。同年に「支那そばや」を運営するサノフード(横浜市)に入社した。現在はサービス担当として毎日店に立っている。
また、12月6日まで支那そばやを埼玉県所沢市の「ところざわサクラタウン」内の「ラーメンWalkerキッチン」に出店中だ。
史華さんが店に立つ上で大切にしているものや、ラーメン店を経営する上で大事にしているものは何か。話を聞くと、父とは対照的な哲学が浮かび上がってきた。
佐野史華(さの・ふみか)1982年福岡県生まれ。2014年に三越伊勢丹ホールディングスを退職。同年、サノフード入社。「dining&style」テーブルコーディネート認定講師やJ.S.A.認定ソムリエの資格を持つ――支那そばやは7月末から11月頭まで東京ラーメンストリートに期間限定で出店していました。初の都内での出店となったわけですが、いかがでしたか。
「ただただ東京駅はすごいな」というのが感想です。本店だとお店そのものを目的にして訪れてくださるお客さまも少なくないのですが、東京駅だと平日は男性のお一人さまのお客さまがとても多く、週末だと家族連れのお客さまが多かったのが特徴でした。これから家族で出掛ける前に立ち寄ってくれたような空気感が非常に好きでしたね。毎週のように他県から通ってくださる方もいて、本当にありがたかったです。
――一方、本店以上の客数が見込める場所での新規開店ということで、お店のオペレーションも大変だったでしょうね。
支那そばやは「新横浜ラーメン博物館」でも出店していたことがあったのですが、基本的にはその店舗とそこまで変わった部分はなかったですね。ただ、一度にスタッフをアルバイトで雇い、その状況で本店よりもお客さまが多い場所での新規出店だったので、教育を全員に行きわたらせるのは大変でした。
幸いみんなが一生懸命になって協力してくれましたし、たくさんのお客さまにも喜んでもらえたので、やってみて良かったなと思っています。
――史華さんが採用を担当していました。面接の時に人材のどんなところを見るのですか。
第一印象で決まる部分も大きいのですが、会話の受け答えがちゃんとできるかどうかは見ています。一方で、会話の内容はあまり気に留めてないですね。「支那そばやはご存じですか?」と確認しても、若い子は知らない方がほとんどです。だから「知りません」といわれても、全く何も思いません。むしろその流れできちんと会話のキャッチボールができているかなど受け答えの仕方を見ていますね。
――受け答えや人柄を見る理由は何ですか?
お客さまと接した時の雰囲気につながる部分もあるのですが、何よりラーメン店はチームワークが大切なのです。仕事が円滑に進むかどうかが大事です。この点、少しでも違和感を覚える方を採用してしまうと、私だけでなく周囲の仕事にも支障が出てしまいます。
一方の接客ですが、これはまだなんとでも変えられる部分があるんですよね。接客はみんな流れに乗るので、いい意味で似たような接客になっていきます。言葉遣いもみんなが「ございます」と話していたら、自分も「ございます」と言わなきゃいけないんだと思うようになりますから。
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