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東京ラーメンストリート仕掛け人 「せたが屋」前島社長が明かす「コロナ禍のフードビジネス戦略」吉野家とシナジーを狙う(1/5 ページ)

» 2021年09月08日 14時06分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

 新型コロナウイルスの感染拡大が猛威を振るう中、思うように遠方に移動できない日々が続いている。ワクチン接種済みであっても全体的な制度設計は進んでおらず、長距離の移動が難しい状況だ。経済活動の本格的な再開にはまだ程遠い。

 特に飲食・観光業への影響は大きい。かつてビジネスパーソンだけでなく、多くの観光客で賑わっていた東京駅八重洲口にある「東京ラーメンストリート」もその一つだ。東京ラーメンストリートは2009年に東京駅の観光スポットの目玉として、東京を中心とした有名ラーメン店を一堂に集めたもの。かつては「2時間待ち」とも言われた東京ラーメンストリートの名店も、コロナ禍の現在では、さほど並ばずに入れてしまう状況が続いている。

東京ラーメンストリート(東京ステーション開発提供)
東京ラーメンストリート店舗位置図(東京ステーション開発のリリースより)

 この厳しい状況は統計にも現れている。帝国データバンクの調査によると、20年のラーメン店の倒産件数は46件。19年の36件を上回り過去最多を更新した。倒産が年間40件を超えたのは調査開始以降初めてのことだ。

ラーメン店の倒産が初めて40件を上回った(ラーメン店の倒産件数 推移、帝国データバンクのリリースより)

 そんな中、東京ラーメンストリートを管理するJR東海グループの東京ステーション開発は発想を転換し、地方に行けない首都圏在住者に向けたプロジェクトを展開した。全国のラーメンの名店を期間限定で東京ラーメンストリートに出店する「ご当地ラーメンチャレンジ by 東京ラーメンストリート」という企画だ。

 約3カ月ごとに1店舗ずつ店が入れ替わり、第7弾まで予定されている。第1弾は横浜市の戸塚に本店を構える有名店「支那そばや」。TBSの番組「ガチンコ!」をはじめ数多くのメディアに出演し、「ラーメンの鬼」という異名を持つ佐野実さんが創業したしょうゆラーメンの名店だ(「ラーメンの鬼」故・佐野実の「支那そばや」が東京駅に出店 切り盛りする妻が経営で守り抜いたものとは参照)。「支那そばや」は11月4日まで出店する。

 この「ご当地ラーメンチャレンジ by 東京ラーメンストリート」の仕掛け人の一人が、東京を中心にニューヨーク含め15店舗以上を経営するせたが屋(東京都世田谷区)の前島司社長だ。前島さんは東京ラーメンストリートが開業した09年から2店舗を出店しており、この事業に一貫して関わっている。

せたが屋のらーめん

 いったいどのような狙いでこのような企画を発案したのか。そしてコロナ禍のフードビジネスの現状とは。前島社長に話を聞いた。

前島司(まえじま つかさ) 1962年生まれ、高知県出身。独学で試行錯誤する中2000年に魚介系醤油(しょうゆ)ラーメン店「せたが屋」を創業。二毛作と呼ばれる営業形態や独自のオリジナルブランドを次々と世に生み出すことから「ミスターラーメン」との異名を持つ。08年にはニューヨーク進出を果たし、世界のラーメンブームの先導者的存在(以下、店舗の写真は前島さん提供)
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