“ラーメンの鬼”佐野実の娘が明かす「ラーメンの新境地」 父になかった「支那そばや」の哲学とは変えるものと変えないもの(4/4 ページ)

» 2021年12月02日 18時15分 公開
[河嶌太郎ITmedia]
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ラーメン店を経営する上で大切にしているもの

――今では父の跡を継ぐ形でお店に立ち、マネジメントする立場になっています。ラーメン店を経営する上で何を大切にしているのでしょうか。

 父はとにかくラーメンの味を追求していたのですが、私はラーメンを作れませんし、ラーメン自体には父ほどの思い入れは持てていません。ただ、ラーメン店で働いていて私も生きがいを感じる時はあります。それはお店がバランス良く円滑にまわっている時ですね。厨房もトラブルなく盛り付けもうまくできている。ホールのスタッフも流れに乗ってうまく運営できている。あの瞬間がたまらなく好きです。

――実さんはラーメンの味のためなら接客も多少犠牲にする面もあったという声もありますが、史華さんの考え方はお父さまと対照的な感じもします。

 私が百貨店に勤めていたからというのもあると思うんですけど、ラーメンの味はもちろんですが、お客さまが喜ぶ空間を作りたい考えのほうが強いですね。空間だったり接客だったり、ラーメン以外のことも全てにおもてなしを行きわたらせたいと思っています。

――「桃の冷やしらぁ麺」が代表例ですが、普通のラーメン店では考えつかないようなメニューも考案しています。

 周囲を説得するのはなかなか大変でした(笑)。実は私、ワインもすごく好きで、ソムリエの資格も持っているんです。数年前まではおすしや焼き鳥にワインというと驚く人も少なくなかったのですが、今では少しずつ受け入れられるようになっています。

 私はこれと同様に、ラーメンもワインとの相性は悪くないんじゃないかと考えているんです。ラーメン店さんにワインセラーがあって、ちょっと雰囲気のいい空間でお客さまに喜んで食べてもらえたらすごくうれしいなと思いますね。

――ラーメン店の経営者でソムリエの資格を持っている人はあまりいないかもしれません。史華さんがお店作りで今後大事にしていきたいことは何ですか。

 みんなとの調和です。お客さまも食べ物も、お店も会社も全部。味だけっていうのは嫌ですね。もちろんラーメンがおいしいに越したことはないのですが、それよりも空間だったり人だったり、そういったところをこれからも大事にしていきたいですね。

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