首都圏からだけでなく、全国から人が訪れる東京駅。この八重洲口側に、東京の有名ラーメン店の味を味わえる一角がある。2009年から始まっている名所「東京ラーメンストリート」だ。この一角のうち1店舗で、各地を代表する名店を出店する企画が7月から期間限定で実施しており、2021年の話題を集めた。
それは「ご当地ラーメンチャレンジ by 東京ラーメンストリート」だ。約3カ月毎に店舗が交代する。第1弾は、「ラーメンの鬼」として知られた佐野実さんが立ち上げた横浜市戸塚区にある「支那そばや」が7月末から11月初旬にかけて出店。東京駅にできた同店は、連日長蛇の列となるほどの人気ぶりだった。
この後を継ぐ第2弾として出店したのが、熊本を代表する名店「天外天」だ。支那そばやは横浜市に拠点を置いていた一方、天外天は初めて本格的な地方店として東京に身を乗り出してきた形だ。出店に至った経緯や東京で経営する厳しさとはどこにあるのか。天外天を経営する小田圭太郎商店(熊本市)の小田圭太郎社長に狙いを聞いた。
――天外天は熊本では誰もが知る名店ですが、東京での出店は初めてです。どのような経緯で出店しようと思い至ったのでしょうか。
東京ラーメンストリートは以前から存じ上げていたのですが、まさかうちがお声がけいただけるとは思っていませんでした。日本ラーメン協会の理事長で、東京ラーメンストリートにも出店している「せたが屋」の前島司社長からお声がけされたのがきっかけです。
熊本の本店はもともと午後6時から11時までの夜営業しかしていませんでした。コロナ禍では熊本市のまん延防止等重点措置(まん防)の影響によって、ずっと店を閉めている状態だったのです。こうした状況もあり、熊本の街中で営業するより「いっそ東京でやっちゃえ」という感じでしたね。何より前島社長にお声がけいただいたので、「もう応えないと男じゃない」と思って引き受けました。
――天外天は熊本では「下通」と呼ばれる繁華街のそばにある本店と、熊本駅店の2店舗を出店しています。今回臨時で3店舗目という形になりますが、どのように人員を確保したのでしょうか。
実は本店を閉めて、本店の店長を東京駅店の店長として滞在してもらう形にしています。本店には「行ってきます」という貼り紙をして出て来ました。今ではコロナも落ち着いており、まん防も解除されたので本店を開けてもいいのですが、7月以降ずっと閉めた状態できています。お客さんの中には、天外天が潰れたと思っている人もいるかもしれません。
――本店の持つ力を全て東京駅店に注力するほどの本気というわけですね。
ここは本気を出すところだと思いました。東京駅店に来られるお客さまの中には、熊本を離れて東京にいる方もおられると思います。こういったお客さまにとって天外天の味は食べていたころの思い出込みで期待されていると思うので、本店以上のものを出さないと納得されないと思います。
やっぱり思い出ってスパイスになるんですよね。ただ本店と同じものを出しても、「あれこんなだったかなと」思われてしまいます。本店以上のものをお出ししないといけません。
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