コロナ禍も落ち着き、今や大勢の人混みが戻ってきた東京駅。日本人だけでなく、外国人観光客の姿も取り戻しつつある。この東京駅八重洲口側の一角に、観光名所として知られる「東京ラーメンストリート」がある。2009年にオープンした東京にゆかりのある人気ラーメン店を集めた商業施設だ。
21年7月からこの区画の1店舗を使い、約100日交代で日本各地の人気ラーメン店を期間限定で出店する企画「ご当地ラーメンチャレンジ by 東京ラーメンストリート」を展開している。
第1弾は、「ラーメンの鬼」として知られた佐野実さんが立ち上げた横浜市戸塚区にある「支那そばや」で、7月中旬から11月初旬にかけて出店した。続く第2弾が21年11月から22年3月にかけて熊本を代表する豚骨ラーメンの名店「天外天」、第3弾が22年3月から6月にかけて栃木県の佐野ラーメンの雄「麺屋ようすけ」、そして第4弾が金沢の人気ラーメン店「金澤濃厚中華そば 神仙」と続いている。
第5弾が、青森の名店「中華そば ひらこ屋」だ。「ひらこ屋」は青森県の津軽地方では伝統的な、イワシの煮干しをダシにとった「煮干し中華そば」を提供するお店で、05年から続いている。店名の「ひらこ」も、マイワシの小魚の名称「平子イワシ」から名前をとっている。
イワシ特有の苦味や酸味が強い煮干し中華そばを出す店が少なくない中、「ひらこ屋」はこうしたクセの強さをあっさりにし、食べやすい中華そばを出すことが評判だ。日本有数のラーメン専門クチコミサイト「ラーメンデータベース」では青森県1位、食べログでも3.72という高評価を獲得している。名実共に青森を代表する人気ラーメン店と言えるだろう。
その人気店が、1月16日まで東京ラーメンストリートに出店している。出店期間中は青森の本店を閉めて臨むほどの本気ぶりだ。東京でも変わらずの人気を見せているようで、連日大勢の客が長蛇の列をなしている。
いったいどのような狙いがあって東京駅に出店したのか、人気店の秘訣は何なのか。「ひらこ屋」経営する株式会社らいもんの三上玲社長に聞いた。
――どんな経緯で東京駅に出店したのでしょうか。
青森では多くのお客さんが食べに来てくれるのですが、いつかこの味を、青森の煮干しラーメンを知らない東京の人にも食べてもらいたい思いがありました。そんな中、「せたが屋」の前島司社長に声をかけてもらい、即答でOKしました。これまで催事などでも東京に店を出したことはなく、東京での出店は初めての挑戦になります。
――現在では人気店である「ひらこ屋」をはじめ、青森市内に3店舗を展開しています。
今では「ひらこ屋」のほか、魚介豚骨を中心にお出ししている「麺屋 らいぞう」、「ひらこ屋」とは別の種類の煮干しを使っている「中華そば ひらこ屋 きぼし」の3店舗を運営しています。
――三上社長が青森でラーメン店を始めた経緯は?
もともと子どもの頃から自分で商売をしたい思いがありました。10代の頃には自営業の中でも飲食店をやろうと意志を固めていましたね。
――飲食業の中でもなぜラーメンだったのでしょうか。ラーメンがお好きだったのですか?
実はラーメンがあまり好きじゃなかったんですよね(笑)。うちは母子家庭で、母がラーメン店でバイトをしていたので、毎日のように煮干しのラーメンを食べさせられていました。小さい頃はその記憶が強かったです。
ラーメンに関心を持ったのは、青森にあるラーメン店があって、そこには全国のラーメンが一つのお店で食べられるお店だったんです。豚骨ラーメンとか、旭川ラーメンとか、いろんなラーメンがそこにそろっていました。
自分はそれまで、地元の煮干しのものを除けば、みそと塩としょうゆしか知らず、豚骨ラーメンも知らなかったんですよ。それで、ラーメン一つとってみてもいろんな種類のラーメンが全国にあると知って、ラーメンの世界の奥深さにひかれ、ラーメン店をやろうと思いました。
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