今回の採用直結型インターンシップの解禁についても、人事関係者の間では「経団連と文科省の間の建前論のルールにようやく政府がお墨付きを与えたにすぎない」と評されている。「インターンシップを採用に直結させていないと言っている企業でも、参加した学生が選考にくればインターンシップの内容を考慮せざるを得ないし、実態としては採用直結のインターンシップになっている」との声もある。
実態としては今と変わらないことになるが、一方で採用直結のインターンシップがお墨付きを得たことの意味は大きい。
前述の採用直結の「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」では、「学生の参加期間の半分を超える日数を職場で就業体験」を必須とし、「職場の社員が学生を指導し、インターンシップ終了後にフィードバック」を行うことを要件としている。
さらにこの要件などの基準を満たすインターンシップは「実施主体(企業または大学)が基準に準拠している旨宣言したうえで、募集要項に産学協議会基準準拠マークを記載可」としている。
仮にインターンシップの期間が5日間であれば就業体験はわずか3日でよいことになる。修了後のフィードバックの内容も細かく規定されているわけではない。企業にとっては現行のインターンシップとあまり変わらないクリアしやすい基準となっている。
多くの企業が「産学協議会基準準拠マーク」を募集要項に記載し、学生を集めるためのツールとして活用する可能性がある。
今まで大学3年生の年末に内定を出していた外資系企業やITベンチャーにとどまらず、多くの企業が囲い込みに走り、内定の早期化がさらに早まる可能性もある。
複数企業の人事アドバイザーを務めるティーブリッジェズカンパニー代表取締役の高橋実氏(高は正しくは「はしごだか」)はこう語る。
「内定の早期化が進むのは間違いない。人気のある企業とそうでない企業の採用格差がさらに拡大するだろう。今後、少子化で労働人口が減少していくと、例えば100人の学生に対し、10社に10人ずつ入ることはなく、70人が人気企業や大手企業に吸収され、残りの30人を巡って中堅・中小企業が奪い合う構図になる。採用力のない中小企業は今まで以上に厳しくなるのは間違いない」
人気のある大手企業と中堅・中小企業の人材獲得競争の格差が広がるだけではない。学生にとっても格差が広がる。
誰もがインターンシップに参加できるわけではない。一般選考のエントリーと違い、インターンシップは人数が限定されるためにエントリーしても落ちる学生も多い。
東京都内の私立大学のキャリアセンターの担当者は「インターンシップは8月の夏休みに集中している。大学としては数社のインターンシップに参加して企業を幅広く見てきなさいと言っている。しかし、人気企業ほど狭き門となっている。企業によっては就職する方が簡単じゃないかと思うぐらいの高い倍率になっている。学生の中には最初のインターンシップでつまずき、就活を投げ出す人もいる」と語る。
就活生の間でも早期に内定をもらう人と、いつまでも就活が終わらない人が発生する「就活格差」も発生するだろう。大学3年になった直後のインターンシップに落ち、最初の挫折を味わっても、先は長い。大学の友人が早期に内定を得るたびに不安と焦燥に駆られながら歯を食いしばり、ひたすら就活を続けなくてはならない。ようやく決まるのが大学4年の年末ということも起こりうる。
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