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なぜ「前例のないIPO」をしたのか ビジョナル末藤CFOが明かす裏側対談企画「CFOの意思」(1/3 ページ)

» 2023年01月20日 16時30分 公開

連載:対談企画「CFOの意思」

 ベンチャーの成長のカギを握る存在、CFO(最高財務責任者)。この連載では、上場後のスタートアップの資金調達や成長支援を行うグロース・キャピタルの嶺井政人CEOが、現在活躍するCFOと対談。キャリアの壁の乗り越え方や、CFOに求められることを探る。

 「CFOの意思」第7回の対談相手は、ビジョナルの末藤梨紗子氏。証券会社出身で、2019年にビズリーチに入社。翌年から持株会社であるビジョナルのCFOを務めている。

 21年4月に実施したIPOは、株主構成に占める海外比率が89%と高いことや、直前(21年1月)に機関投資家に一部、株の売却を行いプライシングを一度つけたことで注目を集めた。なぜチャレンジングなIPOを決断したのか?

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類を見ない海外比率、VCへの親引け──前代未聞のチャレンジングなIPO

嶺井: 19年に入社されてからの3年間、どんなことにチャレンジしてこられましたか。

末藤: 最初のうちは、会社を知ることに多くの時間を使いました。その後、すでにIPOの準備プロセスに入っていたので、その対応、そしてIPOをゴールではなくスタートラインと考えていることもあり、サステナブルに事業成長していくための組織づくり、組織強化を行いながら21年4月に上場。現在は上場企業として、事業成長を支援しながら投資家とコミュニケーションを行っています。

嶺井: IPOそのものも、かなり注目を集めましたね。公開価格ベースで1780億円という時価総額規模や、スタートアップの上場としては類を見ない89%という海外投資家への割当比率は特徴的でした。また、上場直前に機関投資家に割当を行ったり、親引けでベンチャーキャピタルである Z Venture Capitalへの割当を行ったり、キャピタル・インターナショナルなど著名な投資家からIOI(Indication of Interest、株式の買い意向表明)を受けたりするなど多くのチャレンジングな取り組みを行われたIPOでした。

 チャレンジをした背景や苦労についてお聞かせいただけますか。

末藤: 20年の夏に、当初は旧臨報(旧臨時報告書)方式を前提にプロジェクトを進めていたものを、積極的に海外機関投資家に対してアプローチが可能なグローバルオファリング方式に変えました。そのときはビジョナルがどのような会社でありたいのか、10年、20年後どうありたいのか、といった本質的な部分の議論を南(壮一郎代表)と重ね、「グローバルオファリングで、より中長期的にわれわれの事業成長を応援してくださる投資家に対して積極的に売り込んでいこう」と、フォーマットをグローバルオファリングへ変更しました。

 また、われわれの本質的な企業価値や投資家とどのような関係性を今後築いていきたいかを考えた結果、親引けやIOIといった取り組みをあわせたIPOになりました。チャレンジングなIPOをしたいと考えたからではなく、いろいろな人に話を聞きながら、IPOを通して我々が何を実現したいのか、ビジョナルにとって最適なIPOとは何かを問い続け考えた結果でした。

嶺井: 中でも大変だったのはどのようなところでしょうか。

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