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なぜ「前例のないIPO」をしたのか ビジョナル末藤CFOが明かす裏側対談企画「CFOの意思」(3/3 ページ)

» 2023年01月20日 16時30分 公開
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大企業からスタートアップにジョインした人に、よくある勘違い

 現在はビジョナルでCFOとして、財務やファイナンス回りの他、IR、法務、コンプライアンス、総務、人事系など、管理全般を担当しているという末藤氏。キャリアのスタートはモルガン・スタンレー証券で、コーポレートファイナンス、M&Aを通じてファイナンスプロフェッショナルとしての基礎を学んだという。

 アドバイザリーの仕事をしながら「事業会社で判断や執行をするような経験をしたい」と考えるようになり、その後は外資系の事業会社を2社経験。うち1社目がゼネラル・エレクトリックで、ファイナンスのみならず、事業戦略やマーケティングといった仕事も担当した。

 その後は英国の製薬会社、グラクソ・スミスクラインに転職。ファイナンスの他、ガバナンスやコンプライアンスといった守りの仕事の経験を積んだ。パネルディスカッションで同席したビジョナル南壮一郎代表とのコミュニケーションをきっかけに、現ビジョナルに入社した。

嶺井: 入社は2019年の夏でしたね。その直後にお会いしたとき、「入社してみたけどどうなんだろう」「南社長とどうやってタッグを組めば良いパフォーマンスを出せるだろう」とご相談をいただいたことを覚えています。

 実は、末藤さんとは新卒で入った会社が同じで、私にとって大先輩。当時から活躍されていたことを知っていたものの、「果たしてスタートアップとフィットされるのだろうか」という心配を少しだけしていたんですよね。

 というのも、外資系や大企業からスタートアップに移った人の中には、規模の小さいスタートアップに対して、上から目線で物事を捉えてしまったり、チームメンバーへの不平不満を言ってしまう方もいます。でも、末藤さんには全くそのようなことがなく、むしろ「活躍している周りの人たちに、どのようにキャッチアップできるだろうか」と悩んでおられた。しかも、それを後輩である自分にまで相談しておられる。これはメンバーからも慕われて、サポートを受け、活躍されるだろうな、と思った記憶があります。

末藤: 本当に当時右も左も分からないタイミングで嶺井さんに久しぶりに会って、あのときに言われたことをとてもよく覚えています。

 これまでスタートアップで仕事をしたことがなかったため、この転職が何を意味するのか、実はあまり分かっていませんでした。そんな私に嶺井さんは「CFOとして活躍するなら、社長、特にスタートアップの場合は創業社長との関係が最重要」と教えてくださいました。

 その後、IPOのプロセスで南と膝詰めで話をし、お互いの考え方や思考の癖を擦り合わせる中で、その言葉を思い出しながら、創業社長と一緒に仕事をする大変さや醍醐味を味わうことになりました。

環境が変わってもパフォーマンスを出すために

嶺井: ファイナンスでキャリアをスタートされましたが、事業やコンプライアンスなど、他の領域の仕事も経験されています。環境が変わっても、その場で活躍するために、どのようなことに気を付けているのでしょうか。

末藤: 仰る通り、私は職場や職場内での仕事の内容を何度も変えてきました。これは、幼少期、外交官の父について日本と海外を行ったり来たりする生活の中で、言語の壁を乗り越えたり、新しい友達を作ったり、新しい生活様式に慣れたりすることを繰り返していた“自分らしい”選択だといえます。新しい環境に、どうしたら適合できるかを考え続けていました。

 1人だけでできることではなく、その中で歴史を紡いできた人たちに教えを請うことが必要です。その上で自分の付加価値を提供し、チームとして何かを成し遂げたいという思考パターンがあるから、新しい環境でも適合できるのではないかなと思います。知らないことは恥ずかしいことではない。教えてもらって、それで恩返しをすればいいと考えているので、それが影響していると思います。

嶺井: それぞれの新しい環境で活躍する源泉はなんでしょうか。

末藤: 仕事は自分一人でするわけではなく、チームでするもの。分からないことは、素直に分からないという、学ぶ姿勢を大事にすることが一番大きいのではないでしょうか。

 もう1つは、私の中でとても大切にしているモットー「Always Keep On Smiling」、常に笑顔を忘れずに、というものがあります。前向きに仕事をしていればなんとかなる。誰かが助けてくれるし誰かが共感してくれる、そういうポジティブなメンタリティで仕事に取り組むということが大事かなと思ってます。

 後編「CFOこそ『事業のためにリスクを取る』判断をできる人に ビジョナル末藤CFO」では、末藤氏が考える理想のCFO像や、証券会社出身だが「典型的なCFO人材ではない」と考える理由に迫る。

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