今回のケースは、営業部長から若手社員に対する発言であり、明らかに職務上の「(1)優越的な関係を背景とした言動である」と言えます。
また本来、部下が目標未達の状況にある場合、上司は目標が達成できるよう適切な業務指導や指示をするべきです。するべき指導や指示をせずに、有休を取ることができなくなるような心理的圧迫を与えた言動は、「(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」であったと言えるでしょう。
この発言によって、若手社員はショックだったと述べており、精神的苦痛を感じた模様です。「(3)就業環境が害された言動」だったとも考えられます。
従って、この上司の一言は上記3つの要素を全て満たしていると考えられ、職場におけるパワハラに該当すると判断される可能性があります。
なお、(3)の「就業環境が害される」とは、その言動を受けた者が身体的または精神的な苦痛を与えられ、能力の発揮に悪影響を及ぼすなど、仕事をする上で見過ごすことができない程の支障が出ることを指します。この判断にあたっては、「平均的な労働者の感じ方」を基準とすることが適当と考えられています。
今回の「目標未達なのに、有休取るんだ」という言葉が、果たして「社会一般の労働者が同じように言われた時に、仕事をする上で見過ごすことができないほど支障が出るのか」については、見解が分かれるところでしょう。
一方で、ハラスメントは、受けた者がハラスメントだと感じれば該当しうるという労働者の主観が重視される一面があることも事実です。このため、当該の行為は「就業環境が害された」と判断される可能性は高いと考えられます。業務上明らかに必要のない言動はしないように心掛けたいものです。
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