そこで、ロッテリアの売却先とされたのが、外食を「本業」とする企業、ゼンショーホールディングス(ゼンショーHD)である。ゼンショーは、「すき家」「はま寿司」などを中心に事業展開する、売上高日本トップの外食企業だ。
22年3月期の売上高は6585億円、店舗数は約1万店に上る。抱える外食事業は、牛丼、寿司、パスタなど業種幅が広く、レストランからファストフード・カフェなど業態もさまざま。いわば「外食コングロマリット」だ。
現在、ゼンショー傘下のファストフードは、「すき家」(牛丼)、「なか卯」(うどん)、「はま寿司」(回転寿司)など、「日本食」に寄っている。ロッテリアの買収は、欠けている「洋食」ジャンルを補い、テークアウト体制を強化できる。ゼンショーにとってメリットは大きい。
一方、ロッテリアも、ゼンショーの強みである原材料調達力やプロモーション力を享受できる。総じて言えば、今回のロッテリアのM&Aは良い結果をもたらすのではないだろうか。
ただし、両社の企業風土の違いには不安がある。
「世界から飢餓(きが)と貧困を撲滅する」
これが、ゼンショーの「企業」理念だ。尋常ではない。客だけでなく「世界」まで救おうとしている。まるで救世主の言葉だ。だが、ゼンショーの小川賢太郎社長は、本気でこの理念を実現しようとしている。小川社長は「Concept 2022」にて、以下のように語った。
「世界で毎年1400万人が餓死している。食料が『不足』しているからではなく、『偏在』しているから。高く売れる先進国に食料が集中しているからだ。世界で『食のムダ、ムラ、ムリ』を無くせば、飢餓を撲滅できる。途上国で『食のインフラ』作りを進めれば、雇用が生まれ貧困を撲滅できる」(Concept 2022 要約)
そのために、まず「外食業世界一」を目指す。重要なのはスピードだ。ゼンショー創業から2年半で出店できた「すき家」はわずか7店舗。遅すぎる。このペースでは、世界一になるのは3万年後だ。
そこで、上場により資金を調達し、M&Aにより規模を拡大させる。創業29年(2011年)で、マクドナルドを抜き日本の外食売上トップに躍り出た。創業40年の今は、世界外食企業「トップ10」入りを果たしている。「世界一」の背中が見えてきた。
ゼンショーは、ロッテリアに対しても、自社の企業理念に共感し、本気で「世界の飢餓と貧困の撲滅」に取り組むことを求めるはずだ。
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