では実際に事業部が研修の音頭を取ることになったら、どう進めるべきでしょうか? 念頭に置くべきことは、職種や階層といったマクロな同質性を前提に設計する人事部の研修とは異なるやり方で研修を設計&運用すべきということです。
これ以降では、人事部に頼らない、事業部目線に基づいた人材育成スキームの構築方法を紹介します。ご紹介するアプローチは、HRの専門家からすると「王道ではない」とお叱りを受けるかもしれませんが、マーケ/HR領域を行き来するコンサルタントが考える一つの見解であるとご認識ください。
まずもって基点は、組織としての「戦略」です。マネジャーはまず、自組織の向こう3年の戦略を決めてください。これは会社全体の戦略、部門の戦略ということだけではなく、マネジャーが管掌する「チーム単位」で戦略を考えましょう。経理、総務などバックエンドの部門も同様です。
戦略のない組織は存在しないので、この組織として、向こう3年で、どのような定量的な成果を獲得したいのか、社内外からどのような評価を獲得したいのか、それらに伴って、どのような仕組みや体制を創り上げたいのか、そしてその実現に向けて、どのような筋道を描いているのかを明確にしていきましょう。組織としての「戦略」がない中で人材を育成するのは、海図なく大海を浮揚しているに等しいです。
ここからが本題です。事業部が人事部に代わり人材育成計画を策定・運用する意味は先述したように、事業部の戦略にひも付いた、実務で生きる研修を実行し、事業を成長させるためです。3年後の事業部の「あるべき姿」を思い描いた時に、誰が、どんな仕事で、どんな役回りをしているのかを具体的にイメージしてみましょう。戦略がクリアになれば、それを実現するために必要な「業務」が見えてきます。そしてその業務を実現するためのものとして、メンバーが会得/強化しなければいけないスキルも見えてくる、ということです。
「人事部が用意した、階層ごとのコンピテンシー項目に沿って考えるべきでは?」という意見もありますが、事業部の戦略に基づいたスキルと合致しない場合は使用しないという決断を下すことも必要です。また「キャリア設計は、本人の内発的動機に委ねるものだ」という意見をいただくこともあります。できることなら、もちろんそれが最善です。ただし、本当に自発的に取り組み続けられるかというと疑問が残ります。意識の高い社員は計画的に自身のスキルを高める機会を探し、積極的に学んでいきますが、大多数の社員の実態はどうでしょうか。会社のサポートがあることで、スキルを習得し業務に励む社員もいると考えると、その体制を整えておくことは重要だといえるかと思います。
ではその手順について簡単に解説します。
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