「函館新幹線」ついに公約へ! 想定ダイヤをつくってみた杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/8 ページ)

» 2023年05月13日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 ところが今度は「ミニ新幹線」というワードが一人歩きしてしまう。「ミニ新幹線」は「秋田新幹線」「山形新幹線」の整備方式だ。在来線と新幹線は軌間(2本のレールの間隔)が異なるため、在来線の軌間を新幹線サイズにする。ただし、トンネルや橋梁などの設備を変更しないで済むように、車両断面は在来線に準じて小さめにつくる。架線の電流は新幹線に合わせるから、在来線車両も合わせる。つまり、ほかの線区の車両と互換性はなくなる。そしてフル規格新幹線より低コストだ。

 ミニ新幹線は新在直通運転を実施し、東北新幹線内はフル規格車両とミニ新幹線車両を連結して走らせる。山形新幹線は福島、秋田新幹線は盛岡でミニ新幹線車両を分割する。上り列車はその逆だ。盛岡と福島でフル規格新幹線とミニ新幹線車両を連結する。

 なぜこんな面倒なことをするかといえば、大宮〜東京間が過密ダイヤとなっているからだ。上越新幹線、北陸新幹線も走らせたいから、秋田新幹線と山形新幹線の車両は東北新幹線にくっつけて東京に直通させよう、と考えた。

 だから「ミニ新幹線で函館駅に乗り入れる」と聞くと「車両は小さいし、東京〜札幌編成に函館編成をくっつけるのだな」と思いがちだ。それは当然で、吉川氏も3年前の資料や直近の講演会で、ミニ新幹線分割方式を提案していた。

 ミニ新幹線と聞いて「新函館北斗駅のプラットホームは10両ぶんの長さしかないから、ミニ新幹線を連結できないのではないか」と疑問を呈する声もあった。吉川氏は「フル新幹線を7両、ミニ新幹線を4両」でプラットホームに収まるという。「つばさ+はやぶさ+函館編成」も可能だ。しかし吉川氏は「新幹線車両はトンネル通過音対策で鋭角的な先頭車デザインになり、客席が少ない。1編成に先頭車を組み込むほど、座席は減ってしまう」とも話している。

 ある新聞記事では、ミニ新幹線の工事期間中に長期間運休すると不便だ。と書かれていた。しかし吉川氏の構想は、函館本線の複線のうち片方にレールを1本追加するだけだ。ミニ新幹線というより、在来線だけだった青函トンネルに新幹線を通すかたちだ。

 吉川氏は3年前から、そして今でも、「本命はフル規格車両の函館駅直通ですよ」と付け加えることを忘れていない。この構想の起点を振り返ってほしい。吉川氏の発案は「新函館北斗駅に着いて、折返し車庫に入る列車を、そのまま函館本線に入れられないか」だった。つまり、もともとフル規格10両編成を想定していた。トンネルがないから、わざわざミニ新幹線車両にする必要もなかった。

新幹線車両は在来線より大きいため、プラットホームなどの改造が必要だ。これも吉川氏が示したスライド。新幹線車両のサイズが書き込まれていない。つまり、ミニ新幹線車両ではなくフル規格新幹線車両を視野に入れていた

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