優秀な若手ほど「不安で憂鬱」なワケ 早期離職を食い止めるカギは(1/3 ページ)

» 2023年09月19日 07時30分 公開
[児島功和ITmedia]

この記事は、パーソル総合研究所が8月9日に掲載した「20代の若者は働くことをどう捉えているのか?仕事選び・転職・感情の観点から探る」に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。


【更新:2024年2月2日午前10時30分、本記事は転載元からの申し出により内容を一部修正しました。】

 労働市場では人手不足が続いている。パーソル総合研究所・中央大学による「労働市場の未来推計 2030」でも、30年には644万人の人手不足に陥るとの結果が出ていた。「人手不足に対する企業の動向調査」(※1)によると、23年1月時点で人手不足を感じている企業の割合は、正社員でおよそ5割、非正社員でも3割に達している。新卒一括採用が続く中、若者を安定的に採用し、早期離職を防ぎ、いかに育成するかは、企業の持続的成長にとって外せない課題となっている(※2)。

※1:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」(2023年7月26日アクセス)

※2:「青少年の雇用の促進等に関する法律」(若者雇用促進法)の施行(2015年10月)により、事業主に対して若者の雇用促進、職業能力の開発、職場への定着等が求められるようになったことも企業と若者の関係を考えるうえで重要である。

 パーソル総合研究所では、17年から毎年「働く10,000人の就業・成長定点調査」を実施してきた。本コラムでは、19年から23年の過去5年間の結果に基づき、20代若年就業者(民間企業正社員)の「仕事選びの重視点」「転職の捉え方」「仕事に抱く感情」のテーマを取りあげる。

 企業にとって多くの投資をして採用・育成した若手社員が離職することは大きな痛手となる。特に、将来の管理職候補として期待されるジョブパフォーマンスの高い「ハイパフォーマー」の離職は極めて大きな損失といえることから、20代若年就業者とそのハイパフォーマーにも注目し、これらのテーマを通じて早期離職を食い止めるための示唆を得たい。

仕事選び (ゲッティイメージズ)

20代は仕事選びで何を重視するか

 20代の若者は仕事を選ぶ上で何を重視しているのだろうか。それを見たのが図表1である。2019年から2023年の間に、上下5ポイント以上の変化があった項目を赤と紺で強調している。

仕事選び 図表1:20代が仕事を選ぶ上で重視すること(会社員[正社員])

 浮かびあがってくるのは、職場の人間関係のよさ、仕事とプライベートのバランス、休みのとりやすさなどの「働きやすさ」に関する項目の肯定率が低下傾向ということである。対照的に、知識やスキルの獲得といった「成長」に関する項目の肯定率は上昇傾向にある。もっとも、若者は「働きやすさ」を軽視しているわけではない。「働きやすさ」に関する項目の肯定率は低下傾向であるものの、他の項目よりは高くなっている。

 すなわち、20代の若者は「働きやすい職場」だけではなく、この数年間で「成長できる仕事」を求めるようになったのである。これは、2022年までの本調査結果を基にしたコラム「20代若手社員の成長意識の変化―在宅勤務下の育成強化も急がれる」でも紹介されており、23年も同様の傾向が続いているといえる。

 それでは、20代の若者をジョブパフォーマンス別(※3)に見た場合はどうであろうか。2019年から2023年の間に5ポイント以上の変化があった「働きやすさ」「成長」に関する項目だけを取り出したのが図表2である。

※3:「任された役割を果たしている」「担当業務の責任を果たしている」「仕事でパフォーマンスを発揮している」「会社から求められる仕事の成果を出している」「仕事の評価に直接影響する活動には関与している」に対する五件法の回答のうち「あてはまる」を5点〜「あてはまらない」を1点とし、上記設問を「ジョブパフォーマンス」を示す変数として統合した(α係数は0.828)。その上で、得点の高さに応じて「ハイパフォーマー」「ミドルパフォーマー」「ローパフォーマー」に三分割した。

 ハイパフォーマーの若者はローパフォーマーの若者よりも「働きやすさ」や「成長」を重視する割合が高くなっている。ハイパフォーマーの若者よりもミドルパフォーマーの若者の肯定率が高い項目もあるが、ハイパフォーマーとミドルパフォーマーの肯定率はローパフォーマーよりもほとんどの項目で高くなっている。これは仕事や職場への期待値がそれだけ高いということを意味しているだろう。ハイパフォーマーの若者は、この職場では「成長できない」「働きづらい」と感じれば、早々に離職を選択するのではないだろうか。

仕事選び 図表2.20代が仕事を選ぶ上で重視すること(ジョブパフォーマンス別・2023年)
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