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赤字からV字回復の「VAIO」 短期間で新ビジネスを成功させたワケグロービスが解説! 事例から読み解くマーケ最前線(3/3 ページ)

» 2023年10月19日 07時30分 公開
[柳田佳孝ITmedia]
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CRM・SFA・MAで効果的な顧客体験を実現する 3つのポイント

 最後に、VAIOの事例も踏まえ、CRM・SFA・MAを活用する上での3つのポイントを挙げてみましょう。

(1)あるべき顧客体験を具体的に描く

 まず、CRM・SFA・MAはあくまでツール(手段)です。そもそも目的が明確でないと、手段が適切なのかは判断できません。どのような結果を得たいのか、そのためにどのような顧客体験を提供したいのかをできるだけ具体化・明確化しておくことが大切です。

 例えば、まだ製品が市場に受け入れられてはいない段階のプロダクトを担当しているのであれば、CRM・SFA・MAを導入する前にやるべきことは多くあるでしょう。

 あるいは検討の結果、CRM・SFA・MAを導入すべきという判断に至ったとして、具体的に実現したい顧客体験やそれを実行するためのデータ管理方法や業務プロセスを描けていないと、CRM・SFA・MAそれぞれについて、どの程度のスペックの製品を導入すればよいかの判断もできません。

 当たり前の話ではありますが、あるべき顧客体験と、その結果として得たいもの(顧客満足度の向上やLTVの最大化など)を可能な限り具体的に描いておくことが重要です。

(2)要件の実現性を複数の角度から検証しシステムを設計・構築する

 (1)の検討からCRM・SFA・MAの導入を決めた場合、次に行うのはCRM・SFA・MAの製品選定やデータ設計をへたシステムの構築です。

 やや専門的な領域に立ち入るため詳細は割愛しますが、製品選定において、機能一覧上「◯」となっていても、実際に試してみるとやりたいことができないなどさまざまな問題が発生します。また、導入初期段階で将来の拡張性や柔軟性を考えずにデータ設計を行うと、長期にわたって大きな負債を背負いながら運用を行うことになります。

 (1)であるべき顧客体験を描くなかで考えた戦略・戦術を実現するに足るツールなのか、中長期的な目線でも十分なデータ設計になっているのかを考えていく必要があります。ビジネスサイドだけではなく情報システム担当なども交えながら検証するなどして、丁寧に進めていきましょう。

 また、この手のシステム投資を行う場合に必ず問われるのがROIです。CRM・SFA・MAの導入やランニングコストに対して、運用開始後、いつ・どのタイミングで・どのような状態になっていれば「◯」なのかを経営・現場間でそなえておくことも重要です。

(3)定量・定性をいずれも考慮してプロセスを設計する

 システムを導入しても「重要なデータは各担当の手元のExcelにしかありません」「システムへの入力が面倒なので、一部の真面目な人しか商談や受注状況を入力してくれません」「結果として、顧客の詳細情報がよく分からないままカスタマーサポートを行っています」といった状態ではCRM・SFA・MAを導入した意味がありません。当然、理想とする顧客体験も提供できません。

 例えば「今後、マネジメントは原則としてExcelは見ない」といった経営・マネジメント側のコミットメントや、データを入力した方が現場でも総じて得をするような運用設計やインセンティブ設計も重要になります。あるいは、VAIOの事例で触れたようなマーケティングと営業の適切な役割分担の設計なども必要になります。

 また、VAIOの事例の中ではKPI設計にも触れましたが、データに基づいた顧客ニーズやトレンドの把握、施策の評価や改善を行い、データ駆動型のアプローチを継続的に実施することも、成果を最大化する上では大切です。

 このような定量的なアプローチに加えて、定性面のアプローチも重要になります。例えば、MAを導入すると一人一人の顧客のWeb上の行動履歴が可視化できますが、「データを基に顧客の関心事に則した提案を行った結果、お客さまが感動してくださった」といった経験や知見を組織に継続的にもたらすことは、顧客満足(CS)向上のみならず、従業員満足(ES)向上にもつながります。そして、ESの高いスタッフによる提案や接客が、さらなる顧客体験の向上をもたらすという好循環にもつながっていきます。

まとめ

 ここまで、CRM・SFA・MAについて解説してきましたが、これらはあくまでもツール(目的を実現するための手段)です。CRM・SFA・MAを使いこなすためにはさまざまな専門性も重要になりますが、本質的に重要なことは、これらのツールを用いながら「どのような顧客体験を実現し、それによって何を得たいのか」という目的の部分です。

 読者の皆さんが、よりよい顧客体験を実現していくための手段として、適切にCRM・SFA・MAの導入や活用を進められることを願っています。

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