消費者庁は10月1日、景品表示法違反の「不当表示」の新たな形態として「ステルスマーケティング(ステマ)」を追加する新たな規制を施行した。これにより「広告に見えない広告」を利用したマーケティング分野において厳格な運用が求められる。
ステマとは、広告や宣伝であることを隠して、消費者にあたかも一般の情報や意見に見えるように広告を提示するマーケティング手法をいう。
現代ではインスタグラマーやYouTuberを筆頭に、ネットや現実世界で影響力を有する個人の数が急増している。発注企業、広告代理店、インフルエンサー、消費者はそれぞれ、どこに気を付けるべきか。
私たちのような一般人にステマ規制は無関係かというと、必ずしもそうとはいえない。例えば、美容サロンやネットショップで「レビューを書いたらQUOカードをプレゼント」といった内容のキャンペーンについても、投稿内容について何らかの指示や示唆があるような場合は、私たちも知らず知らずのうちにステマの片棒を担いでしまう可能性がある。
仮にステマに関わってしまった場合、誰がどのように制裁を受けるのだろうか。ここからは発注企業、広告代理店、インフルエンサー、消費者のそれぞれがステマに関与した際にどのような法的責任を持つのかを解説したい。
発注企業が広告代理店に宣伝活動を依頼した場合、その活動がステマに該当するかどうかの最終的な責任は発注企業にある。発注企業は、広告代理店やインフルエンサーがステマを行わないように指導・監督する義務があるため、仮に広告代理店やインフルエンサーがステマを行った場合、発注企業も景品表示法違反として罰せられる可能性がある。
個人経営のショップでは、レビュー投稿でクーポンや商品を提供するキャンペーンを打っている例があるが、そのような施策もステマに該当し、景品表示法違反として刑罰の対象となるリスクがある。
では、発注企業の広告運用を担う広告代理店や、広告の映像や画像を作る製作会社、そして広告を掲載する広告媒体の持ち主はステマ規制によってどのような責任を負うのか。
広告代理店は発注企業の依頼を受けて宣伝活動を行う。具体的なディレクションや広告案件の内部調整については広告代理店の役割となるケースが一般的なため、責任を負うようにも見える。
しかし、景品表示法の規制は「事業者」を対象としており、広告主のみに及ぶと記載がある。そのため広告主の事業者以外の製作会社や代理店などは、法的な責任を負わないことになる。
しかし、ステマがひとたび発覚すれば、深く関与した代理店などは、発注企業側にとってはリスクの塊と見なされるだろう。そうなると、以降の取引の打ち切りや新規取引の難航という「村八分」に陥り、事業継続が困難になることは想像に難くない。
もっとも、代理店などが広告主に虚偽の報告を行うなどしてステマを行えば、景品表示法以外の点で法的責任を追及される可能性もある。
結論として、広告代理店などもステマを行うことで社会的制裁や何らかの法的責任を問われるリスクがあるといえる。
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