マーケティング・シンカ論

タコハイって何味? サントリーの謎めいた商品が爆売れした背景メガヒットのレモンサワーに続け(4/6 ページ)

» 2023年10月23日 08時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

100店舗以上の居酒屋で、注文を観察

 甘くなく、すっきり飲みやすい商品を求める中で、タコハイに行き当たったのは、地道な現地調査の結果だ。100店舗ほどの居酒屋に通って、利用客がどのような飲みものを注文しているかを研究したという。

 「居酒屋は、お酒とともに食事を楽しむ人も多くいらっしゃいます。食中酒として何が求められているかを知る観点で、現場に通って研究しました」(黒川さん)

 お店に入るのは、開発チームの1人か2人。大阪や東京の繁華街にふらっと足を運び、小1時間程度、利用客が何杯目に何を頼んでいるかを眺めた。そこで、1杯目として圧倒的にビールが注文されているとともに、2杯目にタコハイを注文する人が多いことを発見したという。ちなみにタコハイとはプレーンサワーとも呼ばれ、ベースとなるスピリッツをソーダ割りしたシンプルな飲料を指す。果実などの香味をメインにせず、あくまでプレーンな味わいの飲料だ。

 ただ、商品化に当たっては一般的なタコハイをそのまま販売するのではなく、アレンジを加えた。食中酒として飲まれることを意識して、脂っぽいものと合わせて飲む際に口の中を洗い流すような「ウォッシュアウト」と、食事そのもののおいしさを引き出すような「マリアージュ」の2点を追求。

 具体的には、レモンサワーなどの商品開発で得た柑橘系のほのかなフレーバーと、新たに開発した焙煎麦焼酎のブレンドによって食事を引き立てながら、飽きのこない味わいにした。そのため、酒場で親しまれてきたプレーンサワーと今回の商品は、同じ「タコハイ」という名を冠しながらあくまで別物である。

食中酒としてこだわった2つのポイント(提供:サントリーホールディングス)

 さらに、ロゴデザインでは「タコハイ」の「タコ」を“多幸”とかけてさまざまな工夫を凝らした。まず、バックに「寿」の字を丸く円で囲んだものをあしらっている。「寿」は7画だが、円を1画加えて8画にすることで、縁起の良い字画としたという。さらに、缶の表面は「タコ唐草模様」という、独自の模様を印刷。途切れずに絡み合う模様であることから、縁起の良さ=ご多幸をイメージしているというこだわりようだ。

デザインにも並々ならぬこだわり(同前)

 さまざまな調査や、自社のこれまでのノウハウを結集して、デザインにもこだわっている、こだわり酒場のタコハイ。しかしながら、当初のPRにあたってはあえて具体的な説明をせず、謎めいた商品として打ち出した。ついついこだわりをアピールしたくなりそうなものだが、なぜなのだろうか。

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