マーケティング・シンカ論

タコハイって何味? サントリーの謎めいた商品が爆売れした背景メガヒットのレモンサワーに続け(2/6 ページ)

» 2023年10月23日 08時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

メガヒットのレモンサワーから始まった「こだわり酒場」

 新たにタコハイがラインアップに加わった、こだわり酒場ブランドは、これまでレモンサワーのみを展開していた。ここ数年続くレモンサワー人気の立役者ともいえる、メガヒット商品だ。

 同ブランドの誕生は、18年。ブームの兆しがあったレモンサワーに着目して、瓶入りの「こだわり酒場のレモンサワーの素」を発売した。当時について、黒川さんは次のように振り返る。

「こだわり酒場」ブランドのルーツ、「こだわり酒場のレモンサワーの素」(提供:サントリーホールディングス)

 「レモンサワーが流行している一方で、味が二極化している点に着目しました。当時、酒場で提供されていたレモンサワーは、より果汁感の強い生搾り系と、甘みに特徴があるシロップ系の2つが主流でした。両者の“いいとこどり”をすれば、レモンサワーのスタンダードとして、売れるのではないかと考えたのが、商品開発のきっかけです」

 生搾り系のレモンサワーは、果汁感が強い一方で果汁と酒との一体感が薄くなりがちだという。一方、シロップ系は果汁感と酒との一体感がある。しかし甘みが強く、当時RTD(Ready To Drink、主に缶入りで購入後にそのまま飲める低アルコール飲料)のニーズとして高まっていた「食中酒」には向いていなかった。

 果汁感を高めつつ、酒との一体感を高める上でポイントになったのが「レモン浸漬酒」だ。これまでの商品開発で得た、果実を酒に漬け込む技術を応用。レモンの味を生かしつつ、酒との一体感を実現することに成功した。さらに、ウイスキー製造を中心に培ってきた同社のブレンド技術を注ぎ込み、酒自体の旨味にもこだわった。

生搾り系とシロップ系の“いいとこどり”をした(出所:サントリー公式Webサイト)

 そうして発売したレモンサワーの素は、当時珍しかった炭酸飲料で割るスタイルも受けてヒット。翌19年3月に、缶入りのRTDとして「こだわり酒場のレモンサワー」も展開した。缶は同年の販売計画だった210万ケースを早々に達成。6月に460万ケース、9月に800万ケースへと複数の上方修正を重ね、最終的には978万ケースを売り上げるほどの大ヒット商品となった。

 「もちろんヒットを狙ってはいましたが、ここまで売れたことには驚きもあります。実は、当初の消費者調査ではデザインなどのウケはそこまで良くなかったのです。業務用、瓶、缶。三位一体で仕掛けられたとともに、梅沢富美男さんが被り物をするインパクトのあるCMなどの顧客コミュニケーションも奏功したのではないかと考えています」

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