あえて謎めいたままでPRした背景には、黒川さん自身の経験があった。
「事業部や営業部署も含めて、流通事業者さまやエンドユーザーにきっちりと説明したい思いは当然ありました。ただ、私自身が営業の場で商品の紹介やこだわりをお話した際に『長いな』と感じてしまったのです。話せば話すほど『おいしくなさそう、厳しいかも』と感じました。そこで思い切って説明を最小限に抑えて、興味をそそる方向にシフトしました」(黒川さん)
方針転換を決定したのは、22年の10月ごろ。商品に関する資料をまとめて営業拠点に周知するのが11月だというから、かなり直前かつ思い切った判断だった。一方で気になるのが、謎めいた商品にすることによる悪影響だ。正体が分からない商品を営業するのは難しくなかったのか。意外にも、支障はなかったという。
「飲食店も流通・小売りのお客さまはタコハイのことをご存じなことが多く、納得してもらえるケースがほとんどでした。出自が酒場の飲料であることが、大きかったと感じています」(黒川さん)
そうして発売した、こだわり酒場のタコハイ。発売直後に飲用意向を調査したところ「気になる」「試す」「何味」といった回答が多く、謎を打ち出した入り口のPR戦略は成功を収めた。また、謎をきっかけに購入した人からは「どんな食事にも合っておいしい」「すっきり飲みやすい」と、狙い通りの反響を得ている。
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