「納得できない」と異動を拒む社員 どうすればいい?Q&A これって違法ですか?

» 2023年10月27日 07時45分 公開
[ほしのあずさITmedia]

Q&A これって違法ですか?

「給与を上げろ」「残業を減らせ」「経費を減らせ」――日々現場と経営の板挟みで悩みが尽きない人事・総務担当者に向けて、リアルな疑問に答えます。回答者は、KKM法律事務所代表の倉重公太朗弁護士。

今回のお悩み

Q: 社員に転勤を伴う異動を打診したところ「納得できない」と断られてしまいました。会社としては異動・配置の要請に従ってもらえないのは困りますし、他の社員に示しをつけるためにも解雇を検討しています。どう対応するのが適切なのでしょうか。

弁護士の見解は?

答え: 「納得できない」理由によります。やむを得ない理由があるのか確認しましょう。

A: 社員が何をもって「納得できない」と言っているかによります。単なるわがままでしたら、全国の地域無限定な社員として契約で雇っている場合、規定に基づいて命令できます。

 社員は規定に基づいた業務命令に従う義務があり、これに「納得できない」程度の理由で反することは業務命令違反になります。過去には、実際に解雇になった例もあります。

異動 異動に納得してくれない社員 どうする?(出典: 写真AC)

 現代でしたら地域限定の社員になれば、転勤ありきの異動はある程度避けられるのではないかと思います。全国転勤社員は初任給の時点から待遇が違いますので、もしこの社員が全国転勤社員としての待遇を受けながら「納得できない」と転勤を拒んでいるようであれば、契約違反であり、業務命令違反や懲戒処分の問題が生じます。

 ただ、納得できない理由が育児や介護などやむを得ないライフイベントの場合は、「育児・介護休業法」内で転勤への配慮が適用されます。育児・介護休業法には「転勤配慮義務」がありますので、ここに当てはまるような異動できない理由があるのか確認しましょう。

 近年は男性の育児参加への関心も高まっており、男性だから転勤してもいいという時代ではなくなってきています。転勤をしたくないという人は地域限定社員を選ぶべきですし、会社としても選択肢を用意しておかなければなりません。

 このケースの社員ですが、「納得できないから」という理由だけで異動を取り消したら、言い出せなくて転勤したこれまでの社員に失礼ですよね。なんでもかんでも社員の言うことを聞けばいいということではありませんので、詳しい理由を聞いた上で、どこまで求めるのか検討することになるでしょう。

話を聞いた人:倉重公太朗(くらしげ こうたろう)

慶應義塾大学経済学部卒。KKM法律事務所 代表弁護士。週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング2022」では人事・労務部門1位を獲得。

第一東京弁護士会 労働法制委員会副委員長・労働法基礎研究部会部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長、日本CSR普及協会理事を務める。著作は30冊を超えるが、最新作は『実務詳解 職業安定法』(弘文堂)。Amazonの著者ページはコチラ

労働審判・仮処分・労働訴訟の係争案件対応、団体交渉(組合・労働委員会対応)、労災対応(行政・被災者対応)を得意分野とする。企業内セミナー、経営者向けセミナー、人事労務担当者・社会保険労務士向けセミナーを多数開催している。


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