マーケティング・シンカ論

氾濫する「販促どまり」マーケティング ”売れ続ける”をつくる競争力の磨き方トライバルメディアハウスのマーケ戦略塾(2/4 ページ)

» 2023年11月08日 08時30分 公開
[池田 紀行ITmedia]

フロー施策とストック施策の使い分け

 獲得型の広告を打てば売り上げは増えます。しかしひとたび広告の出稿を止めれば獲得売り上げはゼロになる。これは施策が持つ「強いフロー性」を表しています。フローの施策が悪いわけではありませんが、「予算を投下した瞬間から成果が出て、予算の投下を止めた瞬間に成果がなくなる」という費用的な施策特性があるということです。

 一方で、ターゲット顧客に商品を知ってもらう、興味を持ってもらう、特徴を理解してもらう、好きになってもらう、信頼をしてもらうことなどを通して「欲しい」「買いたい」「行きたい」と思ってもらう活動もあります。今すぐに買わない顧客でも「いつか買うならこの商品を買いたい」「タイミングがきたときに購入を検討したい」「いつか行ってみたい」と思ってもらうストック性のある投資的なコミュニケーション施策もあります。

 今年度の売り上げ目標を達成することは重要です。しかし、経営や事業は来年も再来年もずっと続くのです。単年度のマーケティング効率(ROMC:Return on Marketing Cost)だけを追い求め、CPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)やROAS(広告の費用対効果)を重視しすぎると、逆に中長期的なROMI(Return on Marketing Investment)を低下させてしまうことにつながりかねません。

「いますぐ客」と「そのうち客」で施策は変わる

 いま、あなたの商品カテゴリーの購入を検討している顧客を「いますぐ客」、現在は具体的な購入を検討しているわけではない顧客を「そのうち客」と呼びます。

「いますぐ客」と「そのうち客」のイメージ(画像:以下、筆者作成)

 1ヶ月に複数回購入する最寄品(=一般消費財)は「いますぐ客」が大半ですが、年に数回購入するアパレルや化粧品、数年に1回購入する家電や電子機器、自動車、損害保険、家具、レジャー施設、旅行先、ホテルや旅館、そして一生に数回しか購入しない生命保険や住宅などは「ごく一部のいますぐ客」と「その数倍の大きさのそのうち客」によって構成されています。

 「いますぐ客」は、あなたが所属する会社の決算期における「今期中に商品を買ってくれる可能性があるニーズ顕在層」、「そのうち客」は「今期は買ってくれなそうだが、来期以降(数年以内)に買ってくれそうなニーズ潜在層」と定義すると分かりやすいでしょう。

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