マーケティング・シンカ論

氾濫する「販促どまり」マーケティング ”売れ続ける”をつくる競争力の磨き方トライバルメディアハウスのマーケ戦略塾(3/4 ページ)

» 2023年11月08日 08時30分 公開
[池田 紀行ITmedia]

「いますぐ客」に偏ったマーケティングになっている

 このように、多くの買回り品や専門品における顧客の大半は「そのうち客」であるにもかかわらず、各社のマーケティングコミュニケーションは「いますぐ客」の効率的獲得に偏重した施策構成になっています。理由は至極単純。多くのマーケターは「今期売り上げの最大化」をミッションとして負っているからです。

「いますぐ客」偏重のマーケティングになってしまっている

 しかし「限られた予算で今期の売り上げを最大にしなければならない」という前提条件はどこの企業(マーケター)も同じです。すべからく、自社も競合も「今期、ニーズが顕在化する(した)いますぐ客」の獲得を目指して争奪戦を繰り広げることになります。

 今期のうちにあなたが担当する商品カテゴリーの購入を検討する「いますぐ客」の数は決まっています。その限られたパイを競合各社で取り合うのですから、競争はゼロサムゲーム(どこかが獲れば、どこかが獲られる)となります。レッドオーシャンでの戦いに勝利するため、広告キャンペーンや値引き合戦が発生すれば、一人当たりの顧客獲得コストは上昇し、利益率は低下します。これが現在、多くの企業が陥っている近視眼的なマーケティングが招いた苦しい状況なのです。

「いますぐ客」の効率獲得には、デジタルマーケが向いている

 ニーズが顕在化したときに顧客がとる行動は「検索」です。そのため、ニーズが顕在化した消費者を最も効率的に獲得するなら、リスティング広告(検索連動型広告)に勝る施策は存在しないと筆者は考えています。リスティング広告は「いま」「誰が」「何に」興味を持っているかという3つの最重要ファクターを同時にターゲティングできることに最大の強みがあります。

 こうして、各社に「リスティング広告でいますぐ客のターゲティング→オウンドメディア(ブランドサイト)へ誘導→Cookieの取得→リターゲティング広告」という定番フォーマットが定着しました。

※ただし、日本でも2022年4月に改正個人情報保護法が施行され、Cookie情報は個人関連情報と定義されました。そのため、Cookieなどの個人関連情報を第三者に提供し、個人情報をひも付ける場合に本人の同意が必要となり、今後はいままでのようなリターゲティング広告の効果を得ることは難しくなると予想されています。

 そもそも、各社のマーケティング予算のデジタルシフトが急速に進む背景には、ターゲット顧客のメディア接触がデジタル化していることがあります。加えて、(1)「いますぐ客」のターゲティング精度が高い、(2)効果検証がしやすい、(3)PDCAの高速回転によって効率改善がしやすいといった優位性もあります。

 つまり、デジタル広告の多くは「今日(今期)の売り上げづくり」(=「いますぐ客」の獲得)のために、顕在顧客を効率的に収穫する費用対効果に優れた施策なのです。

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