人員が拡大しても「再現性が高い」組織を作るためには、STEP6の工程が特に重要です。
営業担当がそれぞれ所有する自己流のノウハウをもとに活動を行うことは、合意事項やそのタイミングなど、人によって違いが生まれやすい要素が増えるため、「再現性が高い組織」を作る上で障壁となります。「統一された営業プロセス」を作ることは、組織力を底上げすることに加え、未経験者の育成期間の短縮(セールスイネーブルメント)なども効果として見込めます。
具体的には、予算や時期など、商談のフェーズによって顧客と合意すべきポイントを定めたり、提案書の形式をそろえることで必須情報も合わせて平準化したりと、BDRの営業活動における変数を限りなく減らすことで、営業担当が同レベルの活動をできるようになります。プロセスを統一したところで、いよいよ活動を開始しましょう。
営業活動の実施と並行して、策定した営業プロセスを起点に本格的に採用・育成に着手します。5つのステップに沿って進めていきましょう。
1:営業オペレーションの可視化
まず、規定した営業プロセスをもとに、「何に対して」「どれくらいの質・量で」「どういう時間軸で」営業が動いているかを可視化します。
2:各営業担当者の成果の可視化
次に、営業担当者ごとのパフォーマンスを比較し、相関が強い要素を特定します。相関が強い要素とは、例えば「予算が〇〇万円確保できる顧客は、意思決定する割合が高い」といった要素をデータから見つけます。そうすると「予算を〇〇万円確保できる顧客と3人商談を行う営業担当の方が、〇〇万円以下の予算を持つ顧客5人と商談を行う営業担当よりもパフォーマンスが高い」といった判断をすることができます。
3:理想的な営業担当者の特徴の抽出
データから特徴を抽出し、「理想的な営業担当者」を定量的・定性的に定義することで、採用育成のゴールも見えてきます。
(例)
定量的:月間コール数が200件以上、月間商談数が25件以上、商談受注率が35%
定性的:好奇心、成功体験、知性、勤労意欲、コーチング応用力
4:ジョブディスクリプション作成・スキルレベルの可視化
採用時に求める水準や、育成過程でどの水準まで求めていくのかを定めます。
5:採用・育成プロセスの改善
理想の営業担当者の行動に近づけるためのトレーニングを設計・運用しながら、改善を加えていきます。
最終的に、チームとしてどの部分のケイパビリティが不足しているのかを把握した上で採用・育成プロセスを回すことで、人材のミスマッチや早期退職、育成期間の長期化といったリスクの低下につながります。
戦略、必要なスキルセット、KPI、営業プロセスなどの定義した内容をもとに、組織全体の営業力を底上げしつつ、採用や育成を進めることで、規模拡大を目指すことができます。営業担当ごとの業績が分散している場合と、組織力を高め営業力を底上げしている場合の違いをイメージにすると、下記のような図表になります。
営業担当の獲得社数や単価にばらつきのある組織と、ばらつきを共通のプロセスに沿って統一化した組織を比較すると、前者は人員の増加分の上昇となりますが、後者は指数関数的な業績増加を見込めます。
ここまでご紹介した通り、部署を作り、人員を配置しただけではBDR組織は機能せず、「再現性のある組織」は一朝一夕では作り上げられないことがご理解いただけたかと思います。
組織立ち上げには数々の難所がある一方で、近年、日本でもBDR・SDRを導入する企業が増えており、今後も必要性が高まることが予想されます。次回は国内企業の具体的な事例をご紹介しながら、BDR導入の難所や導入後の効果について探っていきます。
中央大学法学部卒業後、2社を経てGoogle Japan、freeeで営業部門の統括及び責任者として事業成長を牽引。2017年にMagic Momentを立ち上げ、2018年9月より経営を本格化。累計資金調達額20億円(DCMベンチャーズ、DNX Ventures、三井物産、ほか)。LINEやUSEN、凸版印刷等、多くのエンタープライズ企業の営業変革を人・テクノロジー・オペレーションの全方向から支援。2021年にローンチした営業AI行動システム Magic Moment Playbook は、SMBの大量解約の時期を乗り越え、現在はエンタープライズ企業の生産性向上、LTV向上を非連続に実現している。
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