SFA/CRMツールといえば、世界で最も使われている「Salesforce」が有名です。ではSalesforceを導入すれば何でも解決するかというと、そういうわけでもありません。
確かに素晴らしいツールです。さまざまなカスタマイズが可能で、あらゆる営業組織に適応することができます。しかし、使いこなせなければ宝の持ち腐れです。あらゆるサービスが存在するので、より各営業組織において適するものがあるかもしれません。とはいえ、初めてのツール選びは時間も工数もかかります。
Salesforceをはじめ、各組織の課題解決に適した営業支援ツールを見極めないまま導入に踏み切ってしまうと、実際にツールを利用する各営業パーソンが目的意識もないまま、データの入力に忙殺され、本来注力すべき業務がおろそかになり、やがて仕組み自体が形骸化していく……といった負のスパイラルに陥りかねません。
Salesforceを導入しなくとも、身近な業務の進行や管理方法をちょっと変えるだけで、可視化が進み、属人化が劇的に改善します。
当社では「型化」すると表現していますが、「型化」とは、その組織に必要な営業方法を資料などで可視化・共有して、その通りに行動すれば営業として標準点が取れる状態を作っていくことです。
野球でもサッカーでも空手でも、未経験から始める人はまずは基礎練習から始まります。野球なら素振りをし、フォームチェックをします。サッカーならボールタッチから始めます。空手は「型」から始めます。なのに、なぜか営業だけは自己流で通用すると錯覚されがちなのです。営業も「型」=基礎が大切だということです。
営業トークも顧客管理も育成もツールの使い方も「型化」すること、組織全員がその手段の標準値を理解していることが重要なのだと考えています。まずは身近な業務の型化から始めましょう。
さて、この「型化」を推進する上で重要なのは、自分たちの勝ちパターンを可視化させることです。まずは、これまでの勝ちパターンの成功事例をトップパフォーマーからヒアリングし、一つ一つ全てを言語化してみてください。そうやって各企業オリジナルのマニュアルが完成します。
そのためには専任のプロジェクトを組むことも重要でしょう。責任を明確に持たせ、いつまでに完成させるかまで決めるとよいです。特に一般のメンバーではなく、要職者が責任者であるほうが推進力は高まります。
当社ではそのようにしてマニュアル作りを進めていますが、参考までに一部をご紹介します。
朝礼の型の目的:全員達成への意識付け、コミットメントの引き出し、今から仕事をするぞという気持ちのスイッチ入れ。
夕礼の型の目的:頑張ったチームへのねぎらい、1日楽しかったという印象付け、承認欲求の充足。また、チームの一員であることの自覚醸成、メンバーコンディションの確認、出勤したい気持ちの醸成。
上記のように、目的を明示しています。それぞれアジェンダを決めており、時間設定もしております。また、目的を明確に提示することで、「夕礼であれば叱責しない」というルールも設けています。
営業活動には目標が必ず存在しますし、目標があればショートするかオンペースかいずれかに状況は置かれます。ショートしている場合は原因があり、原因はある程度予測できます。予測されうる原因は何か、そしてその対策は何か、これらを可視化・言語化することが当社の「型化」です。
例えば電話をかける総数がショートしている場合、考えられる理由は以下となります。
(1)事前調査時間
a:調査内容が決まっていない
b:検索スキル不足
c:諦めるタイミング/基準が分からない
(2)架電時間(TEL開始〜終了までの時間)
a:トークスクリプトを徹底していない/練習不足/自己流
b:先方の余談に付き合いすぎ/強制終了方法が分からない
c:アポ日程設定の打診不足により、アポ日程設定に時間がかかる
d:商材理解が甘いため、説明トークがまどろっこしくなってしまう
e:ヒアリング目的理解不足により、余計なヒアリングをしてしまう
(3)ログ残し時間
a:SFAのシステム理解不足→マニュアル不足
b:タッチタイピングスキル不足→学習/練習不足(e-typingで「A」評価がMUST)
c:ログ内容の設定不足→フォーマット設定不足(単語登録機能は使用必須)
当社では顧客の重要人物をキーマンとひとくくりに呼ぶことを推奨していません。最終意思決定者もいれば財務上の決裁者もいます。また、その決裁権を持った方に多大な影響を持つchampionと呼ばれる存在がいる場合や、外部に情報収集を任される方もいます。
誰に対し誰が相対すべきか、登場人物を明確に定義し、共通言語を持ってして営業活動を行うために「型化」をするのです。
このように、型化は無限にできます。すぐにツールを導入するのではなく、重要な部分から少しずつ型化を進めていくことを推奨します。
今回は、ブラックボックス化するオレ流営業がいかに危険か、そして、どのように解消していくべきかを解説しました。少しでもお役立てできていれば幸いです。
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