新時代セールスの教科書

「とりあえずツール導入」する営業組織は失敗する “オレ流”を見える化する最初の一歩(1/3 ページ)

» 2023年12月14日 07時30分 公開
[磯江怜ITmedia]

磯江怜

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株式会社ウィルオブ・ワーク セールスアシスト事業部 セールスソリューション営業部 部長。2008年に新卒入社し、全国各地の支店長を経て、19年には東日本営業部部長に就任。21年より現職。「世の中にBtoBセールスの最適化を」を使命に、営業に課題を抱える企業に対して営業支援を実施し、全国で約60件以上の営業支援プロジェクト運営と約400人以上の営業スペシャリスト組織をマネジメントする。

20年にBtoB特化の営業代行サービス「セイヤク」を責任者として立ち上げ、サービス開始から増収増益でトップラインを毎年130%以上成長させる。14年度 ウィルグループ全社MVP、17年度 ウィルグループNo.1マネージャー賞を受賞。

現在2児の父。趣味はお笑い。


 前回「営業マンの『オレ流』が蔓延していないか データを活用して「属人性」を打破するための3ステップ」という記事を書きましたが、今回は少し深堀したいと思います。

 「この顧客は自分が担当しているので、勝手に接触しないでくださいね!」という営業パーソンを見たり聞いたりしたことはありませんか? もしくは「この顧客は○○さんが担当しているから、接触するのは控えておこう」といったシチュエーションもあるかもしれません。

 こういった状況が存在する場合、要注意です。

 もちろん、担当者を無視して見込みのある顧客に接触せよ、という話ではありません。しかし、ある条件がそろうと企業にとって非常に大きなリスクにつながりかねません。

 それは、顧客を営業パーソン個人にひも付けた後に「放置」し「ブラックボックス化」させてしまうことです。

 私は営業の「支援」がなりわいですので、営業に課題を持つたくさんの企業と相対してきました。その中で、上記のような状況に陥っている企業への営業支援は本当に苦労することが多かったです。

危険すぎる「ブラックボックス化」

 顧客を営業パーソン個人にひも付けた後に「放置」し「ブラックボックス化」させる――これは営業状況が組織として可視化されていない状態を指します。例えば、開拓した顧客をその営業パーソンに任せきりにして、いつ誰と何の会話をしたのか、またこれからどういう取引をしていくのか(5W1H)などを、その担当者以外誰も把握していない状態です。

営業 (提供:ゲッティイメージズ)

 担当顧客へ強い影響力を発揮することは、素晴らしいことであり、その営業パーソンの高い営業能力のたまものです。しかし、営業組織としてどのようなプロセスでその成果が出ているか、直近でどんなコミュニケーションがとられているか、どういった取引が行われているか詳細に把握できなければ、下記のようなリスクをはらんでしまいます。

  • 情報漏えいリスク
  • 不正・コンプライアンス違反リスク
  • 組織内での連携リスク
  • ビジネスの成長鈍化リスク

 他にもさまざまなリスクが存在するとは思いますが、一部を記載しました。

 特に情報漏えいや不正・コンプライアンスは、会社として大きな問題に問われる可能性もあり、その状況を容認できるものではありません。

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