――09年にはテクモと経営統合。11年はガストを買収し、人気RPGの『アトリエシリーズ』をグループに取り入れました。ガストは長野で開発していましたが、20年以降は本社のある横浜に統合しています。こうしたシナジーをどのように捉えているのでしょうか。
M&Aや経営統合は取締役会で最終決定しているのですが、実際に経営統合した後が面白いところですね。より良いゲームを開発する目的は、コーエー、テクモ、ガストの3社も変わりません。面白いゲームを作ってお客さまに楽しんでもらいたい気持ちがまずスタートにあります。この一致点があることによって、合併や経営統合がスムーズにいくのが私の今までの経験からの考えです。
ただ、ゲームの開発方式が3社で違います。コーエーもテクモもガストも長い年月ずっとゲーム作りをしてきた経験がありますので、開発ツールや手順がみんなそれぞれ違うんですね。これも統合していくわけですが、一緒にしていくためには何か共通の目標が必要です。例えばゲームエンジンを共通化する上でも、高品質のゲームを作るために必要だということを一つ一つ理解してもらいながら進めていっています。
――19年発売の『ライザのアトリエ』は、1997年から20作以上続く『アトリエシリーズ』で最高の50万本以上の出荷を達成しています。
こうした開発の共通化によって、例えばガストの例ですと、それまでの『アトリエシリーズ』は大体10万本前後を出荷するタイトルだったものが、今では50万本から100万本ぐらいの出荷本数になっています。品質が上がることによって国内のファン層から海外のファン層までどんどん開拓しています。
――『アトリエシリーズ』もそれまで日本の既存ファンが買い支えている傾向にありましたが、近作では海外の新規層に広まっている傾向があるといいます 。
今では「Metacritic」という統合された評価サイトがありますので、こういった評価を見ながら世界のゲームファンが買ってくださいます。当社の技術がガストのタイトルの中で生きて、さらにシリーズタイトルが成長していったシナジー効果が生まれていると思います。
それからテクモの場合には、テクモのアクションゲームのノウハウと、コーエーの歴史ゲームのノウハウを融合して『仁王』というゲーム作りました。これも今、世界で『仁王』の1と2で700万本の出荷本数を超えていますから、非常に大きなタイトルに育っています。
テクモとコーエーがお互いの良いところを出し合って、シナジー効果として非常に実りのあるタイトルが生まれた実績があります。今後もそういったM&Aや経営統合の機会があれば、どんどん進めていきたいと思っています。
――シブサワ・コウさんのゲーム作りを心から楽しんでいる姿勢が、組織全体にも好影響を与えていそうです。
そうですね。そういう気持ちが大事ですよね。やっぱりゲームは遊んでも楽しいし、作っても楽しいです。そこでがやがやいがみ合ったって全然意味がないですから、「一緒に楽しもうよ、一緒に作ろうよ」という気持ちで進めていますね。
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