ChatGPTは事業活動の「どこ」に組み込まれるべきか? 24年のビジネスはこう変わる2023年、話題になった「あれ」のその後(1/2 ページ)

» 2023年12月22日 09時00分 公開
[鈴木健一ITmedia]

グロービスAI経営教育研究所 所長/グロービス経営大学院教員 鈴木健一(すずきけんいち)

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東京大学大学院工学系研究科修了、米国シカゴ大学経営大学院修士課程修了。

野村総合研究所、A.T.カーニー社で経営コンサルティング業務に従事。

目下、グロービス経営大学院で教員としてテクノベートシンキング、ビジネスアナリティクス、ビジネスデータサイエンスをはじめとする思考系、テクノベート系科目の科目開発、授業を担当するほか、グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)の所長としてAIを使った次世代の経営教育を創るべく研究開発に時間とエネルギーを注いでいる。


 23年に大きな注目を集めた「生成AI」。一時の流行にとどまらず、今後私たちの仕事や生活の在り方を大きく変えていく可能性を秘めています。

 前編では、2023年を振り返り、ChatGPTが爆発的ヒットを記録した要因について解説しました。本稿では、ChatGPTを取り巻く24年のトレンドと、今後のビジネスへの影響について考察してきます。

<前編:ChatGPT進化の軌跡 たった1年で「どこまで」進化した?

24年のビジネスはこう変わる

 23年、目まぐるしい進化を続けてきたChatGPT。今後はどのような方向に進んでいくのでしょうか?

 当初、ChatGPTにはできないことがたくさんありました。例えば、最新の情報や企業固有の情報には対応できなかったり、数字に弱かったり……。実際、複数の数字を入れて平均値を求めさせると、“もっともらしい”のに、誤答なんてことも。

 本稿を執筆している12月15日時点では、最新情報であればネットの情報を自ら検索して回答に利用できるようになっています。さらに、特定の情報(例えば本の内容や規約など)をもとに対話したり、外部APIと連携させたりなど、特定の目的や組織向けに簡単にカスタマイズできるようになりました。また、数値計算もCode InterpreterでPythonのコードを書いて実行することで正確に答えてくれます。

 AIは、まさに優秀なエージェント(代理人)のように、ますます“気を利かせて”仕事を代行してくれるようになっているのです。

(ゲッティイメージズ)

 このようにChatGPTは、あたかも人間が一人では解決できないことを組織で解決していくように、外部の検索やデータベース、あるいはAPIといった形で助けを借りながら、ChatGPTを核とするエコシステムで課題解決していく方向に大きく動き出しています。

 このようなエコシステムが前提となるため、単独の言語モデルにフォーカスして「ChatGPT(だけ)でこれはできる、これはできない」ことを議論すること自体、今後は意味が薄れていくのではないかと個人的には考えています。

(出典:筆者作成)

 ChatGPTのAPIが公開された当初、一般消費者や企業が使える言語モデルの選択はChatGPTほぼ一択でした。しかしその後、選択肢は増えています。例えばコンシューマー向けの対話であれば、GoogleのBardやMicrosoftのBing、AnthropicのClaudeが使えます。また、企業がAPIで使う場合も、Microsoft Azure、Amazon Web Service、Google Cloudなどの大御所のクラウド環境が、生成AIに関するAPIを提供するようになっています。

 一方で、ChatGPTのリリース以降、OpenAIはその名前とは裏腹に、言語モデルに関する情報をほとんど公開しなくなり、“オープン”とは距離を置くようになってしまいました。

 しかし、従来AI分野は、論文やソフトウェアリソースをはじめとする情報を、公共財のようにできる限りオープンにして共有することで、急速に進化してきた背景があります。OpenAIの動きとは反対にオープンソースでの生成AI、言語モデルの開発も活発に進められています。特にGAFAMの中でもMeta社は明確にオープン路線をとっており、Llamaシリーズをリリースしています。

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